食への不信からヒットした、もやし栽培器
一方、中国では食の安全への不安が、大きな社会問題になっています。食べ物全般に対して、「国産は危険」というイメージを持つ中国人は少なくありません。
中でも中国人にとって日常食であるもやしは、「毒もやし」問題が度々報道されるなど、問題の多い食品でもあります。毒もやしは、見栄えを良くしたり、成長を早めたりするために数種類の化学薬品を使っているとされており、その名が付けられたようです。
ですが、もやしは食卓に頻繁に出る食材なので、「危険かもしれないから買わない」というわけにいかないのが実情です。そうした中、最近ヒットしているのが、家庭で簡単に育てられるもやし栽培器です。ネット通販の淘宝(タオバオ)でも売れ筋商品となっています。
もやし栽培器は機械の中にあるシートに緑豆などの種を撒いて蓋をすると、生育に適した温度と圧力によって、わずか3日ほどで食べられるもやしが収穫できる。複数のメーカーから販売されていますが、特に人気が高いのが、ひき肉製造器、ヨーグルトメーカー、ゆで卵・茶碗蒸し製造器など個性的な料理家電を多数販売する中国メーカー「小熊」の商品です。
中国ではオーガニックのもやしはあまり出回ってなく、家庭菜園で簡単に栽培できる青菜などとは違い、もやしは育てるのに技術が必要な野菜。そのため専用の家庭用栽培器が登場すると瞬く間にヒットし、模倣品も続々と出てきたわけです。
今回取り上げた各国のトレンドは、いずれも「野菜」と「健康」を軸にしたブームと言えます。ただしマレーシアでは宗教が、タイでは世界のトレンドに対する感度の高さが、中国では自国野菜への不信が、ブームの背景には宿っています。そのため「健康ブーム」とひとくくりにせず、各国の内情や国民性を理解することが重要になります。
本コラムでは、アジア各国の最新トレンドを発信している「TNCアジアトレンドラボ」の情報をベースに、トレンドを深掘りした記事を連載します。次回のテーマはアジアに広がるカフェブームを紹介します。台湾の親子カフェ、中国の燕の巣カフェなど、アジア各国の新手のカフェを取り上げます。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
Powered by リゾーム?