豊田章男社長の「弁当分析」に学べ

成毛:以前、20年以上前のこと、私がマイクロソフトにいた頃、今はトヨタの社長になった豊田章男さんに「鶏そぼろ弁当効果」を解析するソフトを使ってほしいと言われたことがあります。

 新幹線で東京へ出張するときに、名古屋駅の駅弁売り場に寄ると、いつも幕の内弁当しか残っていないんだそうです。自分が食べたかった鶏そぼろ弁当は先に売り切れてしまっているんですね。

 問題は弁当の仕入れの数にあります。鶏そぼろ弁当が本当の売れ筋なのに、もともと少ない数しか仕入れていないので早めに売り切れる。逆に大量に仕入れた幕の内弁当はいつでも買えるから結果的に多く売れる、そこで店は明日も多く仕入れる。

 これはつまり、売れるからといって白い車ばかりつくっていていいのかという話です。豊田章男さんは、そこに当時から気がついてビッグデータ解析をしようとしていたのです。しかも、それをパソコンにやらせようと考えていました。

 

鈴木:経営者には、そういったセンスが求められますね。今の鶏そぼろ弁当の話が理解できない人は、やはりビジネスの世界を引退したほうがいい。豊田章男さんはいわゆる文系学部出身ですが、それでもそういったセンスを磨くことはできているわけですから、他の経営者も言い訳はできません。

STEMだけでは不十分

成毛:今となっては、経営者として当たり前ですよね。つまり、今さらSTEMをわかっているからと言って安心はできません。

鈴木:すでに教育界では、STEMだけでは不十分だと考えていて、シンギュラリティ以降は、善と美が人間の仕事として残ることを前提とした話をしています。

成毛:つまり、AIに使われるだけの人間にならないためにSTEMは必須だし、AIを利用した仕事をするためには善と美が理解できないといけない。

鈴木:ですから「STEM+アートとデザイン」が欠かせないのです。これを「STEAM」と呼ぶ人もいますが、まだ呼称として確立はしていません。

成毛:善と美が人間の仕事になったその先はどうなると見ていますか?

鈴木:善や美を科学で解明しようという試みが進むでしょう。ですから哲学、倫理、社会学、とりわけ社会性をつかさどる脳、社会脳の研究に興味を持っています。

(了)