歴史を理解するにも科学技術を知るべし

成毛:ただし、科学部人口が17万人になったら、そのあたりの数字は少し変わるかもしれませんね。あるいは、国の側が入試に数学を出す私立大学への助成金を厚くするという手も考えられます。

鈴木:そのあたりはいろいろと考えているところです。大学入試が変われば、高校での教育も変わります。早稲田をはじめ、これから私立文系の入試も大きく変わっていくと思います。

成毛:ただ、科学技術が発展した今の世の中では、その仕組みを理解せずとも便利に使えているのだから、WiFiもスマホも理解する必要はないという人もいます。

鈴木:しかし、たとえば歴史を理解するにも、科学技術を知る必要があります。1989年11月、ベルリンの壁が崩壊しました。あれは特定の革命家がいない状態で、市民が起こした革命ですが、その市民を壁に向かわせたのは衛星放送ですよね。

成毛:東ドイツ側が会見で、出国に関する規制緩和を誤って「即座に認める」としたんですよね。その様子が、衛星放送で東ドイツ国内に、それから西ドイツ側にも伝えられました。

鈴木:では、なぜ市民が衛星放送を見ることができていたかというと、米ソ冷戦構造があったからです。衛星放送は、大陸間弾道ミサイルさらには宇宙開発の競争があったことの産物です。ベルリンの壁が崩壊し、米ソ冷戦構造も崩れ去り、ソ連もなくなった。

 すると、アメリカの国防高等研究計画局(DARPA)が開発していたインターネット技術を国防総省が管理する必要がなくなり、クリントン・ゴア政権(ビル・クリントン大統領とアル・ゴア元副大統領)が、それを世の中にオープンにしました。そのことが、インターネット革命の引き金になったのです。

 つまり、技術革新が世界史を動かし、世界史が技術革新のタネになる。今、ライフサイエンスの世界で進んでいることもまたそうです。こういったことを把握していないと、現代の世界史は理解できません。

論理性を高めるには数学と論述ができればいい

成毛:それひとつとっても、私大文系だからSTEMは無関係とは言えないということですね。数学についてはどうですか。微分積分は社会に出てから役に立たない、だから数学を一生懸命勉強する必要はないと言う人もいます。

鈴木:高校で習う数学は論理です。論理的でないと、自然科学はもちろん人文科学も社会科学も理解し、語り、書くことができません。論理的でないと、普通の文章も書けないのです。

 大学のランキングが話題になることがありますが、そのうちのひとつに「アカデミック・ランキング・オブ・ワールド・ユニバーシティズ」があります。2015年のランキングを見ると、日本からは東京大学が21位、京都大学が22位にランクインしています。

 これを学科領域別に見てみると、東大はサイエンスでは9位、京大は18位です。ところが、社会科学はどちらも200位内に入っていなくて、これが大きく足を引っ張っています。

 今、シンガポールで就労ビザを取得するには大学を卒業していることが求められますが、これに、アカデミック・ランキング・オブ・ワールド・ユニバーシティズで200位以内の大学という条件がつく日も近いのではないかといわれています。

成毛:今、200位以内に入っている日本の大学は、東大と京大以外にはどこがありますか。

鈴木:名古屋大学(77位)、大阪大学(85位)、それから東北大学(101位から150位の間)と北海道大学と東京工業大学(どちらも151位から200位の間)です。

成毛:たったそれだけ! 文系学部が足を引っ張っているのは、論文を書く言語の問題でしょうか。

鈴木:論理性の問題だと思っています。極端なことを言えば、数学と論述ができればいいんです。これも入試である程度改善できるでしょう。

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