ビル・ゲイツ曰く「大人はもちろん、初等教育から『STEM』を重要視することこそ国の競争力に直結する」。
サイエンス(科学)の「S」、テクノロジー(技術)の「T」、エンジニアリング(工学)の「E」、マセマティックス(数学)の「M」、これで「STEM」。そこにアート(美術)の「A」を加えた「STEAM」こそ、これからのAI時代を生き抜くために必要なものだ。
今回は「すずかん先生」こと東京大学・慶應義塾大学教授の鈴木寛さんとの「STEAM対談」後編をお届けする。
なお、この対談は『AI時代の人生戦略 「STEAM」が最強の武器である』(SBクリエイティブ刊)に収録されており、日経ビジネスオンラインで一部改訂版を特別公開するものだ。対談を通してSTEAMに興味を持たれた方は、書籍もお読みいただければ幸いである。
(前編から読む)
受験料収入のため数学が削がれる
成毛:今、大人向けの数学の本が売れています。たまたま高校で数学から離れたけれど、このままではまずいと思っている大人が買っているのかもしれません。
鈴木:日本では1学年にざっと100万人がいます。大学進学率はほぼ50%ですから大学へ行くのは50万人。そのうち一生懸命受験勉強をして大学へ入るのは約33万人です。残りの約20万人はAO入試とか推薦入試とか、競争のない形で進学します。
ところで、受験生が最も多い大学トップ3はどこか、成毛さん、ご存じですか?

成毛:どこでしょうね。まず、早稲田は入るでしょうね。
鈴木:その通りです。早稲田、明治、それから近畿大学が11万人くらいでいつもトップ争いをしています。
成毛:普通に受験する50万人のうち、11万人が同じ大学を受験しているということですか。受験料収入はかなりのものになりますね。11万人が3万5000円を支払ったら、38億5000万円! 大学は受験生を減らしたくないでしょうね。
鈴木:減らさないため、成毛さんが大学経営者ならどうしますか?
成毛:受けやすくしますね。たとえば、受験科目数を減らすとか。しかし、国の教育改革を進める立場にいたら、もともとはできていたのに、受験のために数学を早々に諦める人が年間10万人レベル、つまりその学年の1割にも達するのだとしたら、これは由々しき問題ですね。ところで、先ほどの受験者数トップ争いに慶應は入っていませんでしたね。
鈴木:4万人くらいなんです。なぜだと思いますか?
成毛:文系学部の入試に数学がある、とか?
鈴木:そうです。数学と小論文があるので、多くの受験者から敬遠されてしまいます。

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