特別展でも挑戦する
成毛:今日は平日ですが、館内は結構にぎわっていますね。
藤野:年間200万人を超える方に来ていただいています。
成毛:プロ野球12球団のうち、ホームゲームの年間動員数が200万人を超えているのは6チームだけですから、かなりいい位置につけています。やはり、毎回工夫を凝らしている特別展を目当てに来られる方が多いのでしょうか。
藤野:日本の博物館にはその傾向があるのですが、科博の場合は常設展目当ての方の割合のほうが高いです。ですから、常設展の魅力に特別展の魅力が加わっての200万人なのだろうと思っています。
成毛:それでも、特別展で恐竜モノをやると、相当並ぶんじゃないですか。
藤野:確かに、恐竜をテーマにした特別展には、毎回、多くの方に来ていただいています。ただ、人気のテーマばかりでなく、科博には科学リテラシーの向上を図るという使命がありますので、豊富に持っている標本資料などを使いながら、幅広い分野の特別展に挑戦していきたいです。
成毛:以前開催された『ワイン展』(2015年10月31日~2016年2月21日)はかなり思い切った試みだなと思いました。
藤野:科博は小中学生が行くところというイメージを打ち破れないかと思って、企画したものです。
成毛:科博としてもチャレンジだったのですね。
藤野:結果として、そのときの有料来館者の割合は大人が98%、小中高生が2%となりました。その前の『大アマゾン展』(2015年3月14日~6月14日)では小中高生の割合が全体の20%、『生命大躍進』(2015年7月7日~10月4日)では小中高生の割合が全体の29%でしたから、狙い通りの結果になったことになります。
成毛:特に、若い女性の姿を多く見ましたね。それから、あのときは特別展内のショップでワインを売っていてとても驚きました。
藤野:『ワイン展』は国税庁や農水省とのタイアップで、会期中には国税庁長官もお見えになりました。また国内のワインの産地の方にも土日のたびにセミナーを開いていただいて、これまではあまり結びつきのなかった地域や組織ともつながりができました。
拡張し、巻き込む
成毛:だいぶ画期的ですね。この度、海部陽介先生に『3万年前の航海 徹底再現プロジェクト』のお話を伺いましたが、それもクラウドファンディングを活用されるなど、最近は科博がオープンになっているように感じます。

藤野:科博には動物研究部、植物研究部、地学研究部、人類研究部、理工学研究部と5つの研究分野があり、それぞれを組み合わせると複合的なことができますし、それに伴って連携先も増えています。
成毛:連携の担当は特別に設けているのですか。
藤野:もともと企業や地域との連携を担当する課がありましたが、2016年からは博物館等連携推進センターという、部に相当する部署を設けました。科博は小さな組織なので、自分たちだけでは活動に限界があります。場合によっては、他と結びついて新しいことをやっていかなくてはならないと思っています。特に2020年は東京でオリンピック・パラリンピック大会が開催され、海外からの観光客が増えることが予想されますが、これは科博などが持つ資産をより活用するチャンスでもあります。そこへ向けて各地域の博物館と広く連携・協働し、たとえば巡回展やサイエンスカフェのような事業を一緒に行っていこうと考えているところです。
成毛:まさにナショナルセンターとしての役割を、これまで以上に果たしていこうということですね。

(後編に続く)
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