自分から動く“婚活”が大事

それはつまり、起業した会社や事業に対して、VCに惚れ込んでもらうということですよね。どうすればそれが実現できるんでしょうか?

岩佐:資金調達は結婚と似ていると思っているんです。理想の結婚相手に出会うためには、家にいるだけじゃダメで、やはり婚活するなど自分から動かないといけないですよね。さらに、男性だったら筋トレして体を鍛えたり、女性だったら肌のメンテナンスをしたり、相手に好かれる努力をします。そうやって結婚相手に当たるVCの担当者に出会えたら、出資を実現する最後のハードルは相手のご両親を説得することになります。

 例えば、お母さんは特許について気にするので、特許になりそうな要素を集めて提出しようとか、お父さんは研究開発部門の人材の厚みを気にしているので、開発担当者の採用計画を略歴付きで説明しようとか、考えるわけです。そうしたら、「うん、いい男だよな、仕事ができるやつだ」と認めてもらえて、出資がかなうという流れですね。

岩佐代表らしい、分かりやすい例えです。VCの担当者とも協力して最終決裁者を説得する材料を集めて、資金調達を実現させるということですね。

岩佐:はい。人生の先輩である、お父さん、お母さんが指摘することには意味があるんです。創業期から特許を出しておく、中長期的な技術系人材の計画を立てておくといったことをしておけば、それが事業の骨格を強くして、幸せな結婚生活が送れるようになる。つまり事業を着実に成長させていくことにつながるのだと思います。

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エグジット(出口)戦略としては、IPO(株式公開)を考えているのですか。

岩佐:VCと相談するときにはもちろんIPOを前提に話すのですが、当初からIPOをしないこともプランの一つにあると伝えてきました。それをご理解いただいた上で投資していただいている形ですね。起業当初から、今のように大企業によるハードウエア開発型ベンチャーのM&A(合併・買収)が加速すると見ていたので、IPOをしない道もありますよと話してきたんです。

 今は大手企業が大きな資金を出すようになり、シリコンバレーでもベンチャー企業の多くはIPOせずにエグジットはM&Aという形になってきた。これからベンチャー企業のM&Aはますます伸びていくと見ています。日本でも大企業がハードウエア開発型ベンチャーにM&Aを仕掛けるケースは増えていくのではないでしょうか。特に海外のメーカーが世界レベルの技術を持つベンチャーを真剣に探すようになっています。当社は、海外への製品販売をしていますが、商談の際に「いい投資先はないか」と聞かれることが増えていますね。

(この記事は日経BP社『起業家とつくった 起業家の教科書』を基に再編集しました。構成:尾越まり恵 編集:日経トップリーダー

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