やはり、起業する前にネットワークを広げておくと、そうしたチャンスにつながるんですね。岩佐さんは、起業前から熱心にブログで発信をされていましたが、そうした手法も人脈を広げるために役立つのでしょうか。

岩佐:ブログは役立った、というよりそれがないと何も進まなかったですね。投資家などが集まるイベントに参加しても、集まっている人がどこの誰かも分からないから会話が続かないんです。普段から考えを整理しておかないと、その場で聞かれてもうまく話せませんし。

 ですから、ブログを書くことで自分の思考を整理しておくと、コミュニケーションしやすくなる。思考のトレーニングという意味でも、ブログを書くのはお勧めですね。

 それに、もう10年以上前の話なので、フェイスブックはなくて、ツイッターをやっている人は知り合いだけというような状況でした。ですから、ブログを書いていることで「あの人か」と分かってもらえた。ブログを過去まで遡ると、だいたいその人の考え方が分かりますから。

いくら説明しても出資が集まらない

最初から投資が集まり、事業は順調に立ち上がったのでしょうか。

岩佐:いいえ。当時のことは思い出したくないくらい、資金繰りには本当に苦労しました。最初の2人の出資と私の自己資金を合わせた分はあくまでもシードマネーだったので、私と数名のアルバイトの給与を払ってしまうと、1年も持たないくらいの金額だったんです。

 その金額でできることは、資金調達のための試作機を作ることだけで、開発できた最初の製品を量産する資金が必要でした。量産できなければ事業が立ち上がらずに終わるというデッドラインが見えていたので、2008年1月から1億5000万円前後を目標に資金調達を開始しました。でも、時期が悪すぎました。

2008年は、リーマン・ショックの年ですね。

岩佐:銀行や投資家の人たちは、もう4~5月ごろから、米国の状況が危ないという警戒モードになっていたように思います。資金調達に動き出して2~3カ月でこれから本気を出していくぞというときに、その状況ですからいくら説明をしても出資が集まらない。

 しかも、先行していたハードウエア関連のベンチャー企業数社がいい結果を出せていなかった時期と重なったんです。普通投資したら2~3年でだいたい結果が見えるじゃないですか。ですから、「他がみんな厳しいのに、どうして君の会社だけうまくいくと言えるのですか」なんて、厳しい質問ばかりでした。

 他の会社とは開発の方向がまるで違ったのですが、ネット家電のことを理解してもらうには本当に苦労しました。IoTは、今でこそメディアで目にしない日がないくらい確立した分野になりましたが、当時はどれだけ説明しても通じなくて大変でした。

資金調達に成功し、最初の製品であるカメラ「CEREVO CAM」の量産にこぎ着けた(写真は三脚に取り付けたところ)

それでも何とか資金調達に成功した。

岩佐:09年1月に1億3000万円を調達することができました。電機業界特化型のファンド「イノーヴァ」を筆頭に数社から出資を受けました。その資金で最初の製品である「CEREVO CAM」(パソコン不要でネットに直接接続してUstream配信ができるカメラ)を量産できたんです。それまでの1年間は本当に資金繰りが厳しかったですね。給与の支払い額が不足して私が自腹を切るなど、必死でやりくりして、何とか乗り越えました。