大企業のほうが採用の段階で有利であり、もともと優秀な人材を確保できているから――。

 そう思う人もいるでしょう。その側面が多少なりともあることを私は否定しませんが、そればかりではありません。

 あと2つ、見逃せない重要な要因があります。

 1つ目の要因は、先ほども挙げた、中小企業ならではの仕事の幅の広さ、量の多さです。大企業の管理職と違って、中小企業の幹部は“何でも屋”だから、目先の業務に追われる。その結果、大局的な視点に立つことはもちろん、自分の頭で考え、行動することも避けがちになります。自律的に動くのは、指示待ちより面倒です。

 そして最大の要因は、オーナー社長の存在そのものにあります。

オーナー社長は矛盾している

 繰り返しになりますが、オーナー社長は基本的にワンマンです。

 幹部に対して、「全体を見られない」「自律的に動けない」と不満を持ちながらも、実際に幹部が大局的な視点を持ち、自らの判断に基づいて行動したら、どうなるでしょうか。

 多くの社長は、いとも簡単にダメ出しするはずです。

 「頼りになる参謀が欲しい」と願う一方で、「オレが決めた通りにやってほしい」「私の言うことに逆らわないでほしい」という思いも、確実にあるのです。

 では、幹部に「全体を見てほしい」「自律的に動いてほしい」と思う気持ちは嘘なのか。

 嘘ではありません。それも本心です。

 矛盾しています。そう、多くのオーナー社長は矛盾しているのです。

 そして、その矛盾が社員を指示待ちにしている。

 そんな状況を放置していいでしょうか。日本企業を取り巻く経営環境は日々、変化し、厳しさを増しています。これまでは社長一人に頼りきりで何とかなってきたけれど、次はそうはいかないかもしれない。幹部の皆さんが、社長の主張する路線に疑問を感じる。そんなときには臆さず、社長に意見していただきたい。最初は怒られたり、一笑に付されたりしても、あきらめないでほしいのです。

 なぜなら、社長は心の奥底では「臆することなく意見する幹部」を求めています。矛盾しているオーナー社長は大抵、その矛盾を自覚しています。「任せたいのに、任せられない自分」に苦しみ、煩悶しています。だから、幹部の方には、そんなオーナー社長の“良心”を察して、行動していただきたい。そんな双方の歩み寄りが、御社の生き残りと成長のカギを握るはずです。

(この記事は書籍『小さな会社の幹部社員の教科書』をもとに再編集しました。編集:日経トップリーダー

経営幹部講座」第10期を開催します

 本コラムの著者、井東昌樹氏による「中小企業のための『経営幹部講座』」を、2018年1月開講します。
(月1回の開催で全3回、3月まで)

【プログラム】

第1回 あなたの社長は何を考えて決断しているのか
第2回 会社の強みを伸ばし、弱みを補う
第3回 社長の考えを社内に正しく浸透する

中小企業の経営幹部に必要な知見を体系化。実体験に基づくリアルなエピソードを豊富に交えながら、上司としての心得も熱く語ります。スキルとマインドの両面から「幹部力」を高めます。

自社の未来を担う存在と期待される社員にぜひ、受講していただきたいと思います。

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