今回の審査員を務めた経済産業省新規産業室の石井芳明新規事業調整官は、「デバイスで自動車を止めるという技術面が優れていることはもちろん、その奥にファイナンスやリーシングの仕組みを変えていくという大きな広がりがある」とGMSの構想力を評価した。

自動車普及へ金融サービスに切り込む

 電気自動車の部品を製造するベンチャー企業を立ち上げた当時、中島社長は実績のない中で、粘り強い営業を続けた。ある大手自動車メーカーでは社内品番を獲得して全国の店舗で純正扱いの部品として取り扱われるようになるなど、実績を残している。こうした経験で身に付けた粘り強い営業力が、与信管理のないローンやリースという新しい仕組みを金融機関に浸透させていくことに結びついているようだ。

 「渦潮電機では、電気自動車部門のトップとしてフィリピンで電気自動車の製造に関わった。しかし、政府に電気自動車を販売するには与信が不要だが、民間に普及させようとした途端に与信が通らず、売れなくなった。自分は、空気をきれいにできると、人生を賭けて電気自動車を開発してきた。しかし、いくらそれを売ろうとしても、購入の仕組みを変えない限りは、電気自動車は広がらないことに気付いた」と中島社長は話す。

 そこで、自動車業界にとどまらず、金融サービスの改革にまで切り込む覚悟を決め、GMSを設立。日本とフィリピンで事業展開を開始した。

 20年以上にわたり積み上げてきた自動車をめぐる中島氏の経験と強い思いが、GMSの新たなビジネスを生み出した。

 今回の審査員を務めたグロービス・キャピタルパートナーズ(東京・千代田)の仮屋薗聡一マネージング・パートナーは、「与信審査に通らず、ローンを利用できない人にチャンスを与えることは、彼らの社会における活動機会拡大につながる。そこに聴衆の共感を呼ぶ力があった。デバイス1つからプラットフォームによるサービス提供までビジネスモデルが垂直統合されている点も素晴らしい」と語る。同じく審査員である、グローバル・ブレインの百合本安彦社長は「ビジネスモデルがよく練られており、とてもシード期のベンチャー企業とは思えない」とGMSを高く評価した。

 中島社長は、フィリピンでの実証事業の成功を足がかりに、タイやインドネシアにも事業を展開する考え。日系金融機関が現地の低所得層に金融サービスを広げる際の基盤となるべく準備を進めていくという。

会場に詰めかけた観客が選んだオーディエンス賞はAUTHENTIC JAPAN(福岡市)。山岳地帯などで人の位置をピンポイントで特定できる装置「HITOCOCO」を開発する。久我一総代表の福岡弁を交えたチャーミングなプレゼンが観客を引きつけた

(構成:尾越まり恵、編集:日経トップリーダー

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