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 ミクシィが生み出したスマートフォンゲームアプリ「モンスターストライク」は、2018年10月のリリースから5周年を迎えた。全世界の累計利用者は4500万人に上り、eスポーツの分野にも展開中だ。現在、ミクシィの売上高1891億円(18年3月期)の約9割を、モンスト関連の事業が占める。このモンストを生み出したのが、6月に代表取締役社長に就任した木村弘毅氏だ。

 大きな成功を手にした木村氏だが、過去の実績を「自己破壊」するために次の戦いに挑んでいる。社長として自ら指揮をとる新事業は、スポーツ事業だ。なぜ、ゲームを制作する会社がスポーツの分野に進出するのか。ミクシィの新たな挑戦に迫る。

 2004年にミクシィがリリースした、日本のSNS(交流サイト)の草分け的存在である「mixi」は、コミュニケーション革命を起こしたと言っても過言ではない。爆発的にユーザー数を伸ばし、06年には東証マザーズへの株式上場を果たした。ところが、次第に「Facebook」や「Twitter」など別のSNSへとユーザーが移り、業績は低迷。倒産しかねない状況に陥った。そんな苦境を救ったのが、13年にリリースしたスマートフォンゲームアプリの「モンスターストライク(モンスト)」だ。モンストがヒットした背景には、同社がSNS「mixi」のときから大事にしてきた、友達や家族など近しい間柄の人たちとの「コミュニケーション」戦略がある。当時、多くのゲームが知らない人とオンライン上でつながりプレイすることを想定していたのに対し、モンストは近しい人と顔を突き合わせてプレイすることを想定して設計された。それが他のゲームとの差異化につながったのだ。

木村弘毅(きむら・こうき)
1975年東京都生まれ。東京都立大学工学部中退。電気設備会社、携帯コンテンツ会社などを経て、2008年ミクシィに入社。ゲーム事業部にて「サンシャイン牧場」など多くのコミュニケーションゲームの運用コンサルティングを担当。その後モンスターストライクプロジェクトを立ち上げる。15年6月、取締役就任。18年4月、執行役員 スポーツ領域担当兼任。18年6月、代表取締役社長となる(写真:菊池一郎、以下同)

 結果、モンストは5年にわたり多くのユーザーに愛されるゲームへと成長した。

 プロデューサーとしてモンストを生み出したのが、木村弘毅現社長だ。この成功により、周囲には「もう安泰だね」「モンストで生きていけるね」と言われたという。しかし、木村氏はその当時からこの成功を自ら破壊しようと考えていた。「過去の栄光にしがみつく人生なんて面白くない。挑戦し続けることを忘れた自分や、会社にはしてはならない」と考えていたからだ。

 そんな木村氏が次なるミクシィの柱として挑戦する新事業が、スポーツ事業だ。なぜ、木村氏はスポーツ分野に注目したのだろうか。

 

スポーツをより面白く

 スポーツ事業に注目した理由のひとつは、「マーケットとして多くのチャンスがある」ことだという。

 「海外と比較すると、日本の成長率はまだ低い。取り組み方次第では、まだ伸びしろがあります。また、国は政策方針として、東京オリンピック・パラリンピック後の25年までに、スポーツ市場を現在の約3倍の15兆円に伸ばしていこうとしています。この機運の高まりもチャンスだと感じました」(木村氏)

 スポーツの試合は筋書きのないドラマであり、毎回違う展開が待っている。だから、行くたびに試合を楽しむことができる。そこにミクシィの強みを生かせると木村氏は考えたのだ。