2つ目は、顧客や得意先に対し、酒ではなくアドバイスを売ること。店に来る顧客の要望を細かく聞き、イメージに合う1本を選び抜く。それだけではでない。造り手の様子や人柄が伝わる話を伝えるなど、顧客の知的好奇心を満たす付加価値を添える。

 また贈答用の酒には、贈り手の思いを描いたオリジナルのラベルを提案し、1枚1枚手作りしたこともある。常にプラスアルファを意識したサービスを届けている。

 飲食店に対しては、店が繁盛するアドバイスを心掛ける。そのため、客単価、お酒の予算や原価率、店のコンセプト、メニューを聞いて酒を選んでいる。

ウィン-ウィンで発展

 「日本酒が売れるようになる一方でビールの販売量が減る。その差で売り上げを1億円増やすのに13年かかった。日本の酒の売り上げが9割を超したのは2000年」(山田社長)。

酒商山田の売上高推移
酒商山田の売上高推移
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 2004年には法人化した。現在県内に異なるコンセプトの4店舗を構え、全国の醸造元362社、飲食店1600店と取引をしている。ほとんどが口コミで広がった客だ。2016年3月期の売上高は9億4570万円。

 山田社長が大切にしてきたのは「お客様、お得意様、蔵元と私たちがともに成長・発展するウィン-ウィンの関係」。蔵元と一緒においしい酒ができればいい蔵が増え、お客様が喜び、市場が大きくなり、自分たちも成長できる。

 山田社長のもとには今、経営の仕組みを学びたいと相談者が国内外から続々と訪れている。農業関係者、海外の流通企業など、業種はさまざまだが、ともに繁栄したいという思いは同じ。コラボ商品を発売するなど、酒商山田の周りで新しい取り組みも生まれている。戦いを必要としないビジネスモデルが今、実を結んでいる。

(この記事は、「日経トップリーダー」2017年11月号に掲載した記事を再編集したものです)

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