「人事」「評価」という言葉を使わない
同社と力を合わせて経営改革の取り組みを進めていたとき、気づいたことがありました。それは、「人事」や「評価」という言葉を使うと、女性は身構えてしまう傾向があるということです。
「『人事』か……。カタそうなイメージだな。難しい話をされてしまうのだろうか?」
「『評価』か……。評価されるとなると、ちょっと緊張しちゃうな。厳しく追及されたらどうしよう」
そのような雰囲気を感じ取った私は、こう提言しました。
「『人事』や『評価』という言葉を使わない仕組みにしましょう」
「人事評価制度」は「キャリアアップ制度」、「計画」は「プラン」、「査定」は「キャリアチェック」。「人事」や「評価」といった言葉の持つ堅いイメージをやわらげ、女性により浸透させやすいように工夫をこらしました。
このように、柔らかな言葉を使い、「人事評価制度」という言葉が持つとっつきにくいイメージから脱却するのも、女性に受け入れられる制度づくりの工夫です。
特に経営陣が男性ばかりの会社の場合には、要注意です。経営にかかわる会議資料の中に、聞くだけで身構えてしまうような言葉がないか、一度女性社員たちに聞いてみると発見があるかもしれません。
言葉づかいの工夫をしたのは同社のケースが初めてでしたが、それ以来私はそれぞれの会社の雰囲気に応じて、さまざまな言葉の工夫をしています。
女性社員の願いをかなえる勤務制度を導入
同社が女性社員のためにつくった制度の1つに「ハッピーシフト制度」というものがあります。これは結婚後、会社の状況に応じて8時から17時までの早番固定勤務や短時間勤務を選べるというものです。
同社は小売店ですから、閉店まで勤務すれば、帰る頃には深夜の時間帯になることも珍しくありません。すると、家族にご飯をつくるなどということはできなくなってしまいます。
「結婚したら、夕飯どきには家に帰って、家族においしいご飯をつくってあげたい」
「家族と過ごす時間を十分にとって、良い関係を築き上げたい」
女性社員のそんな願いをかなえる勤務制度といえるでしょう。至れり尽くせりにみえますが、この仕組みを利用するには一定の条件があります。勤続年数や成長段階によって受けられる支援に制限があるため、「ハッピーシフト制度を利用できるように頑張るぞ」と、社員のやる気が高まる仕組みになっています。
社長を中心として女性たちがひざを突き合わせて考え、女性のためにつくった制度なので、効果は抜群。女性社員が活躍できる理由になっています。
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