具体的なイメージをつかんでいただくために、九州で化粧品や生活雑貨の小売店を展開するクライアント企業を例にとって、実際の「ビジョン実現シート」に書かれた経営理念、基本方針、行動理念、ビジョンを抜粋して以下に引用します。
(1)経営理念
「私たちは、快く、楽しく、温かみのあるライフスタイルを提案し続け、お客さまを幸せにします」「私たちは、みんなとともに未来を考え、物心両面の豊かな生活を実現します」
(2)基本方針
(お客さまに対する方針)「期待を上回るサービスを追求し、感動と満足を与え、お客さまを幸せにします」
(人材育成に対する方針)「夢や目標を持ち、それに向かって成長していく人間力のあるスタッフを育成します」
(3)行動理念
「プロとしての誇りを持った仕事をし続けます」「お客さまをもっともっと幸せにするために、自発的に考え行動します」
(4)ビジョン
「化粧品、生活雑貨小売業界で九州ナンバーワン」
このように、経営理念に基づく会社の考え方や、社員に実行してほしいこと、人材育成方針を盛り込んだものが、「ビジョン実現シート」なのです。シートを全社員で共有することでみんなの意識を一本化し、ベクトルを合わせて邁進していく準備が整うと考えてください。
女性の人生の歩みに思いをめぐらす
経営理念を考えるのは社長の役割ですが、理念が定まったら、中核となるスタッフとともに考えることが、女性の活躍のためには欠かせません。
どんなに大きなビジョンや事業計画を打ち出したとしても、社員みんなに「そうなりたい」という意欲を感じてもらえなければ、シートは単なる絵に描いたモチにすぎません。
女性は自分の仕事だけではなく、家族の生活と健康を守っているという責任感が強いものです。会社の方針や求められる人材像が、仕事のスキルのみを重視しすぎる内容だったり、すべての社員に例外なく強いリーダーシップを求めるものだったりしたら、女性はどう思うでしょうか。
「私の務めは、会社の仕事ばかりではない。到底、ついていけない」
そう思われてしまうでしょう。
一方で、目指す人材像が、「このような人物になれたら、会社だけではなく、家庭でも地域社会でも慕われる人になれる」と感じられるものだったら、どうでしょうか。
「これこそ、私が目指す女性の理想像だ」
「このような人間に、ぜひ成長したい」
女性社員がそう感じ、理想の姿に向かっていくことに意欲を持てるようなシートをつくることができれば、会社にとっても、社員にとってもプラスになる道をともに歩んでいけます。
そもそも、会社の目的とはいったい何でしょうか。全社員の幸せを実現することだと私は考えます。人事評価制度の目的もまた、全社員の幸せの追求に他なりません。
全社員の幸せをかなえるには、制度導入の初期段階から女性社員を巻き込んでいくことが必要になってくるのです。「男性正社員」中心で会社を運営していくことは、もうとっくに限界を迎えています。そのことは、中小企業経営者の多くが痛感しているのではないでしょうか。
女性が「その気になる」ビジョンや人材像はいったいどのようなものなのか。女性社員の意見に耳を傾け、彼女たちの考え方を取り込んで「ビジョン実現シート」を作成してください。
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