
IMD北東アジア代表。日本興業銀行、ボストンコンサルティンググループ、リクルートを経て現職。一貫してグローバル化の中での日本の企業・組織、個人の支援に従事する。IMDでは経営幹部教育に軸足を置く。共著書に『なぜ、日本企業はグローバル化でつまずくのか』、『ふたたび世界で勝つために』(ともに日本経済新聞出版社)など
河田淳(かわだ・じゅん)氏(右)
ファミリー・ビジネス・ネットワーク・ジャパン 参事。早稲田大学商学部卒業後、国内外の金融機関に勤務する傍ら、1998年よりファミリー・ビジネス・ネットワーク・ジャパン設立に参画。現在はスイス・ローザンヌの本部やIMD、及び世界40カ国の同族企業経営者らとのネットワークをもとに、ケース教材の開発、講演などを国内外で手掛ける。
高津:日本人は人に迷惑を掛けてはいけないということを金科玉条として教えられる。ですが、何かを発言することから新たな展開が生まれる、そのプロセスをもっと楽しむことができるようになるといいのではないでしょうか。それができれば180度世界が変わりますから。
IMDに学びに来たある50代の上場企業の日本人幹部は、5日間のすべてのセッションで自分の課題を周囲と共有し、多くの人からインプットをもらい、「ブレイクスルーした。おいしい時間だった」と、はつらつとした顔で帰って行きました。
リーダーというのは、自分で現状を変える人たちのこと。与えられた枠組みの中で生きていくか、率先して改革する人になるかでリーダーとしての存在感に大きな違いが出ます。
河田:「後からあれこれ言う日本人」はもうやめなければなりませんね。課題を意識した上で、様々な知見を学ぶことは実に有意義です。
今年の春、世界約60カ国の同族企業の経営者たちが集う勉強会で、シンプルなゲームをしました。指先に目を描いて……手を上に伸ばし、指先から見える景色を語る遊びです。
いつもの自分と異なる視点で物事を捉えると、何が見えるか。新しい見方を意識するためのゲーム。
つまり、課題を解決する際に、立場や味方の違う人の意見を理解し、否定するのではなく「面白い」と感じられるかどうかもリーダーにとって重要です。
アジャイル時代のリーダーシップ
高津:その通りだと思います。IMDでは、「アジャイル(※3)時代のリーダーシップ」として4つの条件を掲げています。
環境の変化が速く、したがって判断や行動の迅速さ、俊敏さが求められる時代のこと
- 謙虚さ(humility)
単に腰が低いという意味ではなく、知的に謙虚という意味です。他者からのフィードバックを受け止められる。また、知ったかぶりをしない。時として自分よりも若い人、肌の色が違う人、服装や立ち居振舞いの異なる人の意見や情報が、正しいと認められる力のことを指します。 - 適応力(adaptability)
変化が常だと知っている。新たな情報をベースに考えを変えることは弱みではなく強みであることを、受け入れていること。 - ビジョン(visionary)
短期的な不確実性に直面しても、長期的な方向の感覚を明確に持っていること。 - 良好な関係性(engagement)
新たなトレンドへの興味関心・好奇心を持ちつつ、社内外の関係者に耳を傾け、彼らと交流し、意思疎通を行う意思がある。様々な人や情報と深くかかわり、ハブ(hub:中心、中継装置)となれるか。
今の時代、①から④のどれかが欠けているだけで、脆弱なリーダーになりかねません。
特に①②に関する話で、4、5年前からよく聞かれるようになった言葉に「リバースメンタリング」があります。メンタリングは通常、上司が部下の相談役になりアドバイスするもの。リバースですから、その逆。部下が上司に自分が持つ知識や価値観を伝え助言するのです。
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