経営環境の変化が激しい時代に、世界の経営者たちが変化を見せている。その1つが社員とかかわる姿勢だ。長年に渡り、リーダーとして成功している人たちは何が違うのか。世界各国の経営者や経営幹部とネットワークの深い2人に聞いた。

河田:私はファミリー・ビジネス・ネットワーク(※1)という世界の同族企業の経営者からなる会員組織の参事を20年近く務めています。仕事柄、世界各国の経営者と情報交換や勉強会をする機会が多いのですが、日本に戻るといつも感じることがある。
ファミリー・ビジネス・ネットワーク(F.B.N.)はファミリービジネスに携わるオーナー・経営者・親族を会員とする世界最大級の非営利団体。1990年、スイス・ローザンヌで設立し、世界60カ国から約1万人のメンバーが加入。ファミリービジネスの課題解決、研究、交流、情報交換などを図っている。日本では2002年にキッコーマン創業家の髙梨一郎氏が理事となり、ファミリー・ビジネス・ネットワーク・ジャパン(F.B.N.J)を設立した。
それは、日本人は、教育の過程で、想定された“正しい”答えを出すことに慣れさせられているということ。
しかし、経済がゼロ成長を続けるなか、これまでの何かを壊さなければならない時期に来ている。想定された答えを出し続けても成長は見込めません。
雑談になりますが、先日、奈良県の「夢窓庵」という日本料理店に行き感動した話があって。ミシュランの二つ星を獲得している店なのですが、元造園師の女将さんが面白い。「イクラやウニなどの魚卵系に合うワインがない」と、苗木から育ててワインをつくった。それが白ではなく、赤ワイン。普通、魚といえば白ワインがお決まりでしょう? 予定調和を崩していく日本人に会うとうれしくて。
高津:同感ですね。私はIMD(※2)というスイスのビジネススクールに勤めています。IMDは特に企業の幹部育成に力を入れているため、毎年、世界98カ国から約8000人の経営幹部が学びに来る。
IMD(International Institute for Management Development)は、スイス・ローザンヌに拠点を置くビジネススクール。企業の幹部育成教育プログラムにおいて、トップクラスのランキングを誇り、毎年世界98カ国から8000人以上の経営幹部が学ぶ。短期公開プログラムは世界第1位(2012-18フィナンシャル・タイムズ)。日本企業や日本のビジネスリーダーからも厚い信頼を受けている。また、毎年発表する「国際競争力ランキング」は世界的に評価されている。
一連の授業に参加した後、エバリュエーションシートに評価や感想を書いていただくのが恒例ですが、そこで気付いたことがあります。日本人参加者は「もっとこういうことを教えてほしかった」と記述する人が多い。かなり受け身です。「教えてほしかった」では後の祭りです。
世界基準は、全然違う。参加する企業幹部の中には、授業中の質問やコメントを通じて、自分の知りたいことや、問題意識を、教授やほかの参加者に共有していく人たちがいる。休み時間に教授をつかまえて、注文をする人もいます。自分の役に立つように、授業内容を導いていくくらいでないと、機会損失になると考えています。
学ぶということは、「問題意識を持ち、インプットをし、自己や他者との対話を通じて省察(リフレクション)をし、アウトプットをする」という一連のプロセスです。自らの問題意識が出発点にあります。
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