組織のベクトルをそろえていく力

 特に中小企業の場合は、社長が自ら中心となって面談に同席することがポイントです。それが会社の理念を全社員に浸透させ、組織のベクトルをそろえていく一番の要因となります。

 もしも、社長のビジョンがうまく伝わらず、社員たちが思い思いの方向を向いて働いているとしたら、力が分散されて会社の成長につながらないでしょう。それは、一人ひとりに能力があればあるほど、もったいない話です。

 面談に、会社の方向性やビジョンを再確認できる要素が常にあると、社員はどう動けばよいのかがわかります。面談には、社員のベクトルを微調整していくという働きもあるのです。

 さまざまな企業と接するうちに、評価者に女性がいると、実にうまく会社が回ることが見えてきました。女性には、女性にしか言えない悩みがあります。男性の上司には到底言えないようなことも、女性の評価者には素直に打ち明けられるのです。

誤解4 「人事評価制度は規定やルールを守って行う」

 一般的に「一度つくった人事評価制度は、数年は変えない」という企業が多いでしょう。人事考課規定や就業規則に制定したことは、「変えてはいけない」という意識があると思われます。

 しかし、私が提案する人事評価制度は、評価をするごとに制度の内容を変えていきます。「人事評価制度をつくる」となると、精度の高いものをつくり上げなければならないと考えている人も多いことでしょう。しかし、全社員の役割を100%明確にし、正しい評価結果が得られる人事評価制度を最初からつくるのは到底無理なのです。

 最初につくる人事評価制度は、5割から6割の完成度でいいと私は考えています。内容を改善していくことを前提としてつくるのです。そして初めは賃金に連動させず、トライアルとして運用したほうがはるかに効果的です。

 初めから思い通りの結果には、なかなかなりません。評価基準には理想を盛り込んだとしても、全く想定外の結果となってしまうということが起こります。実際に運用してみないとわからないことばかりなので、柔軟な対応が必要なのです。

社員の納得度を高め、成長につなげる道

 私は、人事評価制度を導入した会社の全社員に無記名で「納得度アンケート」を実施してもらっています。評価結果に満足できたかどうかの納得度を記載してもらった後、フリーの項目を設け、そこへ改善案などを自由に書いてもらうのです。

 この無記名でのフリー項目が、とても重要です。社員の本音が出てくるからです。良い提案は制度の改善に活かし、社員から出てきた意見や要望に対して一つひとつ回答します。

 こうして、社員が制度づくりへ参加しているということを意識できるようにすることがポイントです。

 一般的には、人事あるいは経営者側がつくった評価ツールに従い、評価される側は制度づくりにタッチしないと考えている人も多いかもしれません。しかし、それでは現場に合わせた制度の改善はありえません。本当に成長してもらいたい人の声に耳を傾け、より実態に合った評価制度へとブラッシュアップしていくことで、成果が高まってくるのです。

 こうして、評価制度づくりに全社員を巻き込んでいけば、社員のうちにも「会社に意見を言ってもいいのだ」という意識が生まれてきます。