誤解2 「評価は賃金に結びつけなければならない」

 一般的には、人事評価制度といえば、賃金を決めるための仕組みであると認識されています。しかし、私が推進したいと考えている人事評価制度は人材育成を目的としているため、まず評価のみを行い、最初から評価結果を賃金に反映させることはしていません。その理由は、逆効果のほうが大きいからです。

 私たちは、賃金に結びつける前の評価をトライアル評価と称して、最低でも3回はそれを行います。

 なぜなら、人の仕事ぶりを適切に評価することは、それほど簡単にできることではないからです。評価する側の能力が未熟のまま評価結果を賃金に連動させたら、恐ろしいことが起こると思いませんか。

 まずは、リーダーを評価者として成長させるために人事評価制度があると思っていただきたいのです。リーダーが評価のスキルをきちんと身につけ、部下を納得させられるような評価ができるようになるまでは、絶対に賃金に反映させるべきではありません。

評価を人材育成の仕組みとして活用する

 日本は今、深刻な人材不足に陥っています。

「なかなか、いい人が来てくれない。どうやったら人材を確保できるのか」

 私が関わっている多くの企業からも、常に聞こえてくるため息です。女性をうまく輝かせることができている会社でさえ、このような状況なのです。

 会社をより成長させるためには、新人採用よりも、会社で一生懸命に仕事をしてくれている社員の能力を最大限に活かすことを、まず考えるべきです。

「この人の最大の能力を活かせる仕事は、どこにあるだろう?」
「この人は、この部署にいることで、本当に最大限に輝けるのだろうか?」

 昇進・昇格といった枠組みだけで人事評価制度をつくってしまうと、このような疑問に対する答えがなかなか出ません。人事評価制度には、社員の適性を見極め、適材適所によって社員一人ひとりの能力を開花させる役割を持たせるべきなのです。

誤解3 「フィードバック面談で評価を伝える」

 ボーナス支給時などに全社員の「フィードバック面談」を行っている企業も多いでしょう。その面談の目的をどのようにとらえているでしょうか。

「評価面談だから、評価を伝えるのが面談の目的でしょう?」

 そうお答えになるのは当然です。もちろん、評価を伝えるのも、面談の目的の1つです。しかし、忘れてはならないことがあります。それは、面談がコミュニケーションの場であるということです。

 上司も部下も、仕事をしていると大小さまざまな疑問や不安、心配事が生じてきます。特に女性は、実に細かなことによく気づいてくれるものです。それを伝えるために、上司と2人になれる瞬間を部下がじっとうかがうといった情景は、どんな会社でもみられることでしょう。

 定期的な面談という場が設けられることで、相手の都合をうかがう苦労はなくなり、風通しの良い会社がつくれます。社員たちが、モヤモヤすることなくスッキリとした気持ちで働いてくれるようになるのです。

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