しかし、慣れるにつれて次第に仕事をスムーズにこなし、積極的に提案までするようになった社員の姿を見て、考え方が変わっていく。「時代の流れについていかないと、むしろ社員を駄目にしてしまう。彼らの力を埋もれさせていたのは、私だったのかもしれないと思うようになった」。

休日を勉強に使う

 こうして着想からわずか半年で、グランディア芳泉は顧客満足度を維持・向上しつつ、人や残業を増やさず、休みだけを多くするという難題をクリアした。

 休みを増やす過程で、社員が自分の頭で考えるようになり、さらに休みを自己啓発に充てる社員も出始めた。

 ほかのホテルや旅館、レストランを実際に利用して学んだり、仕事にも役立つ習い事を始めたりするほか、観光庁まで足を運び、担当者と会ってインバウンドの勉強をしてきたという社員もいる。

 「自分の給料や休みを有効活用して自己啓発に励める人こそ、これからの会社を引っ張ってくれる社員だと思う。『休みが増えても、することがない』とこぼすような社員は要らない」(山口専務)。

 余力が生まれた今、サービスの質のさらなる向上に挑戦する余裕もできた。料亭では大量の作り置きをやめて、お客が来てから調理し、盛り付け、出来立ての料理を出す形に変更。提供のタイミングが遅れないように、管理システムも採り入れた。

 部谷(へや)保総料理長は「注文を受けてから作り始めるので、お客様の好き嫌いなどの要望にも細やかに対応できるようになった」と話す。

「休みを活用して、資格を取得したり、コンテストに出場したりする若手が増えた」と話す部谷総料理長(写真:山岸政仁)

 16年には、創業初の休館日を10日ほど設けた。ゴールデンウイークや夏休みの直後など、例年稼働率が低い日に設定した。社員が休めるだけでなく、館内のメンテナンスなどが効率よくできるという利点もある。

 「人が足りないと言うのは、自分たちの会社がいかに非生産的かを宣伝しているようなもの。経営者がどれだけ本気になれるかがすべて」と山口専務は強調する。

 毎年夏休み期間は人手が足りず、派遣スタッフを10人程度雇うのが常だったが、今年はゼロ。今や社内で「人手が足りない」は死語になった。グランディア芳泉の売上高は25億4000万円。収支は数年前までトントンだったが、改革後は10%までアップした。

 それでも「今はまだ改革の3合目」と山口専務は手綱を緩めない。「わが社は、お客様のために何かしたいと思っている人たちの集まり。だから改革もスムーズに進捗している。今後は社員にもっとサービス業本来のやりがいを感じてもらえるように努力していきたい」。

(この記事は、「日経トップリーダー」2017年10月号に掲載した記事を再編集したものです)