賃金制度、所属部署が一つになったことで、そんな状況も変わった。予約状況に応じてシフトを組み、お客が集中する時間や場所に随時、人員を適正配置できるようにしたのだ。

 前出の木内氏の場合、フロント業務をメーンにしつつ、チェックイン業務がひと段落する夕方などに、レストランの仕事をする。「マニュアルや先輩社員の仕事ぶりを見ながら勉強した。数週間もすると慣れた」。

「3定」のノウハウを活用

休み方改革後は「社内の雰囲気が明るくなった」と話す高間課長。別の部署から「仕事を効率的にする方法を教えてほしい」と相談を受けることが増えた(写真:山岸政仁)

 施設管理を担当する業務部はマルチタスク化により、従来業務の「宴会場の設営」に、「お膳の準備」と「厨房から宴会場までの料理の運搬」という仕事が加わった。仲居の負荷を減らし、接客に専念してもらうことが目的だ。

 「空いた時間にお膳の準備などをするのはいいが、通常業務もある。その分の時間を捻出しないといけない」。半導体メーカーから転職してきた業務部の高間直樹課長は考えた。そこで前職で培った、決まったもの(定品)を、決まった数(定量)だけ、決まった場所(定位)に置く「3定」や、職場環境の維持・改善で用いられる整理、整頓、清掃、清潔、しつけの「5S」のノウハウをフル活用した。

 それまで、お膳準備に必要な器や固形燃料などがどこにあるかは仲居しか知らず、しかも置き場所も収納ケースもバラバラだった。

 そこで棚卸しを実施し、必要なものを1カ所に集め、何がどこにどれだけあるかを一目で分かるようにした。また、どの器をどこに配置すればいいかが分かるように写真で示したマニュアルも作成(下の写真を参照)。これなら経験のないスタッフでも短時間でお膳の準備ができる。

 地道に改革を進めることで、社員の意識も変わってきた。山口専務にとってうれしい誤算は、高間課長のように、社員から業務効率化のアイデアが次々に出るようになったことだ。

 例えば、社員の発案で、朝食バイキングのお客用トレーを廃止し、料理を取る皿の種類も半分以下に減らした。これによりトレーはもとより、洗う皿の量もコストも半分以下に削減できた。

「無駄を排して接客時間を増やそう、収益性を上げようと考える組織になってきた」(山口専務)。

 女将は当初、マルチタスク化に強い抵抗を感じていたという。「休みだけ増えて、給料はそのままなんて聞こえはいいけど、かえって仕事を増やして、社員に負担をかけるのではないかと心配だった。マルチタスク化するよりも、人を増やしたほうが社員にとってもお客様にとってもいいのではと反対した」と当時の胸の内を明かす。