まずは無駄を省く

 頭の中には「休みを増やす」というゴールがあったが、まずは今のオペレーションをとにかく見直し、生産性の向上に取り組むことにした。どれくらい無駄を省けるのかを試してみる。これならいけるという確証を得た時点で、さらに突き進めようと考えた。

 実際に取り組んでみると、面白いように成果が上がった。その一つが、食事時間の2部制の廃止だ。従来、夕食のスタート時間は午後5時半と午後7時半の2パターンがあり、お客を振り分けていた。100人分の席しかないところに、一度に200人が来たら十分な対応ができないからだ。

 このため、社員は営業開始の2時間前には出勤して、1部と2部の座席レイアウト表を作成。席ごとに座るお客を決め、事前にテーブルセッティングしておいた。

 一見、効率的に思える。だが、お客は気まぐれだ。午後5時半と申告していたお客が午後7時半に変更してほしいと言ってきたり、3人と聞いていたお客が5人で現れたりすることもある。そうなれば、座席表の組み替えが必要だ。お客を待たせるうえ、何より事前の準備がすべて無駄になる。

 そこで思い切って2部制をやめて、お客に好きな時間に来てもらう方式に変えた。事前のセッティングをしないので、社員はオープンの15分くらい前に来ればよくなった。1日約2時間の時短だ。

 「事前準備しておかないと、お客様に迷惑をかけてしまうと思い込んでいたのは誤解だった」と山口専務は言う。

接客時間が増えた

 ふたを開けてみると、お客は自然と分散した。そうは言っても時には多少集中する。その場合も「午後6時前後は混み合います」とチェックイン時などに説明しておけば、お客のほうがその時間を避けてくれるうえ、たとえ多少待たせてもクレームを言われない。

 また、混雑が予想される日は店を少し早く開けた。こうした工夫で、オペレーションが乱れることは予想したほどなかったという。

 さらに、思わぬメリットもあった。事前準備をせずに、お客の目の前でセッティングする方式に変えたことで、接客時間が増えたのだ。お客から丁寧に要望を聞き出せるので、よりきめ細かなサービスができるようになった。

 2部制に続いて見直したのが、予約確認の電話だ。「もしも連絡なしにキャンセルするお客様がいたらどうするのか」と担当者はこぞって反対した。

 「1週間だけやってみよう。すべて俺が責任を取る。1人でも来なかったらその分は俺が自腹で全額払う。社長にも土下座して謝る。だからやってみて」。山口専務は社員たちをそう説得した。

 それまで予約確認にかけていた時間は2、3時間。つながるまで1人に3、4回電話することもざらだったが、その時間がゼロになった。「自分も含めて感覚がまひしていた。やめたら顧客満足度が下がると思い込み、無駄を無駄と思わなくなっていたようだ。業界の常識や思い込みを排除することで先が見え始めた」。

 効率化を推進していく過程では、 「今まで自分たちがやってきたことは無駄だったのか。俺は無駄な人間なのか」と不安を漏らす社員もいたという。

 そんなときは「単に無駄をなくそうというのではない。無駄をなくして生まれた余力を、サービス向上に振り向けるのが目的だ。あなたは決して無駄ではないけれど、その作業は無駄かもしれない。『必要な仕事』と『不必要な作業』を区別して、もっと生産的な仕事をしよう」と説明した。すると、社員の目が輝き始めた。