2020年の東京オリンピックを前に、しのぎを削っているのはアスリートだけではない。ベンチャーにも大きな好機が訪れている。政府は、成長戦略の一環として、オリンピックイヤーに世界中のベンチャーを招き、「グローバルベンチャーサミット」を開催する方針を掲げている。その足掛かりをつくるべく、経済産業省は先進的なアイデアや技術を持った日本のベンチャー約50社を選出。欧米やイスラエルなどのイノベーション拠点に派遣する。

 経済産業省が主催する「中堅・中小企業等イノベーション創出プログラム(飛躍Next Enterprise)」は、2015年に安倍晋三首相がシリコンバレーを訪れた際に発表した「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」の一環として、16年にスタート。17年10月に第2回の最終選考が行われ、日本を代表するベンチャー約50社が選出された。選ばれたベンチャーを、米国シリコンバレーをはじめとするイノベーション拠点に派遣し、現地のキーパーソンとの人脈作りをきめ細かく支援する。

 プログラムの目的は「シリコンバレーをはじめとするグローバルなイノベーション拠点とのつながりづくり」だ。

シリコンバレーに派遣される主な会社 概要
ウィファブリック 企業同士で在庫を売買する繊維・ファッション業界のサイト
うちゅう IoTによるリモートセンシングを通じた大規模農場農家向けのソフトウェアサービス
クリスタル光学 高機能バイオ系テンプレートの低コスト量産製造技術
クロスブリッジ ブロックチェーンを利用した、格安・即時の送金・決済サービス
サーティーフォー スマートフォンアプリを用いたオンライン医療相談プラットフォーム
チャレンジ センサー内蔵の地震速報システム
テクノラボ IoTデバイスに特化した樹脂ケースの供給ビジネス
ユカシカド 世界初 の「尿を送るだけで栄養状態がわかる検査」
レイドリクス 無線LANシステムを中核にした位置推定システム、産業用無線LANシステムなど
ABEJA 小売り・流通業界を主な対象にしたディープラーニングを利用する店舗運営の改善ソリューション
AeroEdge 航空宇宙部品・医療IoTデバイスなど
Eyes JAPAN 車輪にLEDをつけたシェアサイクルを使ったサービス
HoloEyes 医療用の画像情報を3D-VR化できるツールの開発
I&C ロボティク家具(洗面台、キッチンなど)
Momo IoTフロントエンドプラットフォーム
Nextremer 自動車向け対話システム
Psychic VRLab ウェブブラウザーのみで稼働するVR制作、配信クラウドサービス
Trillium コネクテッドカーのためのセキュリティシステム
Zpeer 臨床獣医師専用の情報コミュニティーサイト

 「世界でのイノベーション創出競争はますます激化しており、日本のベンチャーは様々なグローバル拠点とのつながりを強化しなければならないと感じている。日本のベンチャーの競争力を高め、人、技術、資金が集まるようにすること。そして、海外に進出したベンチャーが現地できちんと稼げるようにすることが狙い」と経済産業省の関係者は話す。

 第2回となる今回は、昨年のプログラムに参加し、海外展開を進めたリピーターの応募も多かった。

 「昨年派遣したベンチャーは、海外で新たな取引先を開拓したり、現地のパートナーと共同プロジェクトを進めたり、ビジネスが一回り大きくなっている。“政府お墨付き”として海外に派遣する以上は、当然それに見合った企業を選ぶことになる。派遣先の企業や政府も、国から選ばれた企業という見方をするため、取引への姿勢が違ってくる」(経産省)

世界のスタートアップと相互交流

 派遣先は16年と同じ、米国シリコンバレー、オースチンと、シンガポールの3カ所と、17年は新たに欧州とイスラエルが加わった。

欧州に派遣される主な会社 概要
ソラミツ ブロックチェーン・プラットフォームとして、モバイルでも開発できる通貨・ポイントなどのデジタルアセット提供
ネイン 音声アシスタントを搭載したヒアラブル端末による新しいUI
パブセン SNSなどのクラウドサービスにアップロードしている自分のデジタルコンテンツの一元管理サービス
東京ハース 外国人向けに内覧・契約・支払いなどが可能となるオンライン賃貸管理サービス
夢見る ロボットプログラミングの教室
16Lab 超小型IoT用モジュールを用いた認証や決済などの総合型プラットフォーム
BizteX クラウド型RPAによる定型業務の自動化
nobollel スマートフォン向けのゲームアプリ

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