ここまで手間をかけて割に合うのかと首をかしげるかもしれないが、住民同士の人間関係、東邦レオと住民の信頼関係を良くすることは、経費削減になるという。
例えば「植木に害虫がついたら、この殺虫剤を使ってください」と頼んでおけば、住民が進んでやってくれる。除草作業を住民自身でできるように、草刈り機の使い方を教える講習会も開く。「自分たちの手で緑豊かな住環境をつくろう」という参加意識があるから、そうした協力が得られる。「結果的に、必要なときだけ私たちが出動すればよくなる」と吉田氏。
従来の造園会社とは全く異なる新しい事業は口コミで広がり、現在約150の管理組合と契約、7億円を稼ぎ出している。
低価格より理想の住環境を実現する会社を
マンションの住民が求めているのは、自分たちの指示通りに動き、低価格で植栽を管理する会社ではない。きれいな緑に囲まれて、気持ちよく暮らせる住環境。もっといえばコミュニティーが良好で、みんなが楽しく暮らせることが大切であり、それを植栽の観点から実現してくれる会社を望んでいる。
そこに気づいたことが、東邦レオのマンション植栽管理事業成功の最大の要因だろう。
マンションの植栽委員会に毎回出席したり、住民のクレームにじっくり耳を傾けたりするのは時間も手間もかかり、コストに見合わないように見える。しかし、そこに踏み込まなければ、顧客の本当の欲求を満たすことはできない。顧客の中に入り込んで、緑化会社としての専門的な観点と、ファシリテーターとしての立ち位置から、顧客の希望をかなえようとしている。
そうして顧客と一体化することで簡単な作業は顧客が進んで引き受けてくれるため、経費が抑えられるという点は興味深い。
「私たちはお金ではないところで、お客様とつながっている」と東邦レオの吉田氏は言う。この言葉こそ、事業の教育化が成功している何よりの証左だ。
(この記事は、「日経トップリーダー」2017年9月号に掲載した記事を再編集したものです)
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