一般に、剪定(せんてい)や花壇の植え替えなどの植栽管理は、マンションの管理組合が地元の造園会社に発注する。しかし、造園会社が個々の住民の意見をくみ上げることはまずない。管理組合のほうも、できるだけコストが安い造園会社を選ぼうとする。吉田氏は、ここに事業の可能性を見いだした。

反対意見を唱える住民には個別にヒアリング

 東邦レオは、良い住環境を実現する植栽のあり方について、住民と一緒に考えることを目指す。そのため剪定や花壇の整備といった作業だけでなく、理事会内での植栽委員会の立ち上げ、住民の意見対立の調整、若い住民を巻き込んだ委員会運営の指南など、あらゆる面に関わっている。

 植栽委員会の会合には東邦レオの担当者も参加。住民の意見が対立した場合は解決策を一方的に提示するのではなく、それぞれの意見を整理し、課題を洗い出すファシリテーター役に徹する。

 合意形成に反対して譲らない住民がいれば、個別に会ってヒアリングすることもいとわない。例えば、「あの木を切ってほしい」と強く要望する人に、その理由を聞いてみる。すると「父親が体調を崩して外に出られないため、室内の日当たりを良くしたい」といった事情が見えてくる。

 時間と手間をかけて個々の意見を十分に聞き取り、発言の背景を把握し、それを他の住民たちと共有する。それまで「木を切りたいなんて勝手だ」と思っていた人も含め、そういった背景を知ることで住民同士が打ち解け、合意形成が図れるようになる。

イベントを通じて、マンション住民の信頼関係をつくる
イベントを通じて、マンション住民の信頼関係をつくる

 住民同士の信頼関係の構築には、イベントも有効だ。例えば、親子で参加できる寄せ植え講座。敷地内の植物の名前を教えるツアーも人気だ。普段、通る場所以外にどんな木が植えられているかは、案外知らないからだ。

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