いかがでしょうか。今日は時間の関係でできませんが、実際にはフィードバックを受けて試作品を修正し、また相手に意見を求めたり、場合によっては問題定義や共感自体が正しかったのかどうかまでさかのぼって見直したりして、成功の確度を高めていきます。
それではせっかくですので、作ってもらったプロトタイプが画期的で感動した人がいたら発表してください。
「非常に私にとって使い勝手のいい財布を作ってもらいました。もともと私は財布を持つのが嫌いな人間です。でも、やむを得ず持つ場合、できるだけコンパクトにしてほしいとまず要望しました。そのうえで、店の会計時にレジでお金を支払う際、できるだけ小銭を素早く出せる機能を求めました。すると、小銭を上から入れると、自動的に大きさや色を判別して整理し、種類別に下から取り出せる財布を作ってくれました。これはあったらいいと思います」(A社長)
作った人はどのような点にこだわったのでしょうか。
「Aさんは、レジで小銭を出すのに戸惑って店員をイライラさせたくないので、必要な時にすぐ取り出せるように大きめの小銭入れを持ち歩いているという話を聞きました。そこから、他人をイライラさせたくないと気遣いをする人だと推察しました。そこで、小銭を探す手間を省くには、上から入れれば自動的に仕分けして下からすぐ取り出せるようにすれば便利だし、店員を待たせる時間も減ると考えました」(B社長)
いい発想ですね。インサイトで、他人を困らせたくないというところを推察してからプロタイプを着想していますから。相手のことを考えていると思います。
ちなみに今日は財布という形あるものを取り上げましたが、サービスの場合はどのようにプロトタイプを作るのかという質問をよく受けます。これは、例えば次のような2つの方法があります。1つはサービスの流れを紙に書いて紙芝居のような形で見せて意見を求める。もう1つは、サービス提供者と顧客を決めて演技し、使い勝手を疑似的に体験して感想を聞くというものです。これでかなりの部分は詰めることができます。
限られた時間だから一生懸命アイデアを出そうとする
駆け足でしたが、財布作りを通じて、今日はデザイン思考のエッセンスを学んでもらいました。最後に全体を振り返っての感想をいただけますか。
「じっくり考えるのではなく、パッパとやっても意外にアイデアが出ると思いました」
「工作を久々にしました。紙であってもプロタイプを作ると、イメージが具体的になるので、大切だと分かりました」
「話し合いを通じて相手のことを知ることが大切だと感じました」
皆さんも今日の体験学習をヒントに、デザイン思考を自分の会社で実践してみてください。本日はありがとうございました。
(構成:久保俊介、編集:日経トップリーダー)

現地に拠点を構える日系企業で、米・スタートアップ企業と日本の中小企業の協業を支援する、ブリリアント・ホープが主催。日経トップリーダーと日経BP総研 中堅・中小ラボが企画・協力しています。対象者は、中堅・中小企業経営者向けの通年セミナー「日経トップリーダー大学」を受講した経営者およびその関係者です。来年も開催を予定しています。「日経トップリーダー大学」やシリコンバレー研修の詳しい内容についての質問はこちらのお問い合わせフォームからお願いします。
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