デザイン思考は「ヒューマン・センタード・アプローチ」 (人が中心の思考法)とよく言われます。デザインそのものの格好良さではなく、助けたいと思う相手の心情を理解したうえで解決法を生み出していくからです。

 もう1つの特徴はスピード。「ファスト・ペイスド・プロセス」と言われますが、できるだけ素早く5のプロセスを進めます。今日も1時間ちょっとで5つのプロセスを取り組んでもらう予定です。スタンフォードの学生が取り組む場合も、大体3カ月単位が多いと思います。

 5つのプロセスの中で特に重要なのは問題定義です。何が問題かが特定できていれば、解決策が大きくずれることは少なくなるからです。創造のプロセスで大切なスタンスは、「ビー・オープン・トゥ・クレイジー・アイデア」。先ほど説明した通り、とんでもないアイデアでも受け入れましょうということです。日本的に言えば、ドラえもんなら「この問題を解決するために4次元ポケットからどんな道具を出すかな」というくらいの感覚で考えてほしいのです。

 実際、電話や辞書、カメラ、電卓などがすべて1つになった夢のような道具を、20年前に米アップルのスティーブ・ジョブズが想像しなかったら、今日のスマートフォンはなかったわけですから。

相手が求めている理想的な財布をどう作るか

 ではここから、体験学習に入っていきましょう。今日のテーマは「相手のために理想的な財布作り」です。最後にプロトタイプ(試作品)まで作ります。イメージとしては、通常の店では売っていないような革新的な財布です。

 まず2人1組になって、AさんとBさんを決めてください。そのうえで、まずAさんが自分の財布を机の上に出して、Bさんに自分の財布を紹介してください。その際、Bさんは話を聞きながら、どんなつくりの財布なのか、お金以外に何が入っているのかなど、Aさんの財布の理解を深める質問をし、手元に配布したワークシートに聞いた内容を記載してください。時間は4分間です。終わったら、立場を逆転させてまた4分間、同じことをしてください。これが相手に共感するプロセスです(中小企業経営者がそれぞれ自分の財布について説明を始める)。

デザイン思考の体験学習にて。テーマは「相手の求める理想の財布作り」。2人一組になって、互いに自身の財布を説明するところから始まった

(8分後)相手の財布についていろいろと知ることができましたね。ただ、相手を深く知るには、もう少し時間があったほうがいいと思います。そこで、次の掘り下げというステップに移ります。今度は財布を通して見える相手自身の特徴を見極めてください。

 例えば、「Aさんはさっきこう言っていたけれど、何でそこにこだわるのか」「今の財布に満足しているのかどうか」「前の財布と比べてどう感じているのか」。こうした相手の思いや感情を引き出す質問を聞き手側はしてみてください。これも片方4分ずつ。計8分で取り組んでみましょう(再び2人一組で発表・質問し合う)。