「物だけを渡して終わりでは、貢献したことにはなりません。相手の気持ちがそれによって変わり、互いに満足度を高め合えるからこそ、いい循環になる。私たちは支援しているのではなく、我々が一緒に戦う。こんな機会を与えてもらって感謝しています」(本島社長)

競技の見所は、弱点を突く駆け引き

 大勢のサポーターに囲まれ、壮行会では終始穏やかな表情だった岩渕選手。Tシャツを贈られると、「パラリンピックで活躍し、もっとパラスポーツの世界を多くの人に知ってもらい、将来的には他の選手の役にも立ちたい」と抱負を語った。

 岩渕選手はこう続ける。「パラリンピック選手に対して、障がいがあってかわいそうだけれど頑張っている、という見方もあります。でも、自分はそう思ったことはありません。パラ卓球の最大の見どころは、障がいによる弱点を徹底的に突く攻め方です。選手は、その弱点をカバーするため、自分ができることを集中的に強化して、防御していく。駆け引きの様子が分かりやすいので、ぜひ注目してください」。

「支援というより、一緒に戦う気持ち」と本島社長(写真右)
「支援というより、一緒に戦う気持ち」と本島社長(写真右)

 実は壮行会の約1カ月前、本島社長は、ある経営者の集まりで岩渕選手を紹介した。そのとき、本島社長は冗談交じりにこう語っていた。

 「皆さん、岩渕選手は相手の弱みを上手に突くことができます。将来は社外取締役の候補になりますから、今からご縁を持っておくといいですよ(笑)」

 本島社長は、選手の今の活躍だけを願って物資や資金の支援をしているわけではない。もっと言うと、パラリンピックでの勝ち負けにはこだわっていないのかもしれない。70歳の経営者が、選手生活の先も見て、長期的な視野で、21歳の青年を育てていく。そんな印象さえ受けた中小企業の支援だった。

(構成:福島哉香、編集:日経トップリーダー

                                             
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