新事業に関わりを初めて私が持ったのは2008年。新事業開発を目的に、全社タスクフォースが立ち上がりました。テーマは欧州で乗り物が10年後にどう変わっているか。それを想像した上で、未来に対応する新事業を提案せよというもの。各事業部から合計10数人が招集され、3チームに分かれてヨーロッパに視察に行きました。

 結果はどうなったか。主力のバイクやマリン事業に携わる人は、どうしても乗り物自体が好きなので、人が乗り物に乗った状態の写真ばかりを撮りまくりました。3輪自動車とか、子供が自転車に乗っている様子とか、スカートのようなフードを着けてバイクに乗っている人の様子とか。これらをデジタルカメラで2000枚、3000枚撮る。そのうえで新しい乗り物が開発できないかと考える。

車両が動いていないときが気になる

 一方、私はどこに目を付けたか。人が運転していないときの乗り物の様子です。欧州の狭い町中の路上に大量の自動車が長時間停まっている。貴重な空間を占有しているのに何の価値も生んでいない。調べてみると、乗り物が動いて価値を生んでいる時間は、せいぜい全体の5~10%。残り90~95%は停まっていて価値を生んでいない。

 そこで解決策として私は何を提案したか。都市内限定の自動運転交通です。比較的低速で時速30㎞くらいの。これなら乗り物の稼働率が上がって無駄にならず、景観も損なわない。しかし、当時の経営陣からは「車が自動で動くなんて、10年、20年たっても実現しないだろう」と疑問視されました。実際に10年たった今どうでしょう。自動運転が実現しつつありますよね。

 つまり、今の製品を重視する人は、自由に発想することを自ら制限してしまっている。だから、既存事業の延長線上にある重箱の隅をつつくような新事業提案になって、結果的に投資対効果が合わない。

 

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