AI革命に関して、もう一つよく大きな話題となるのが、人の雇用は減るのかという点です。結論から言えば、単純には減らないと私は見ています。AIは人の仕事を代わりにする機能と、人の能力を増やすという2つの側面がある。昨今のAIで人の仕事が減るという議論では、後者の視点が抜けています。後者は、IA(Intelligence Augmentation、知能拡張)と呼ばれ、初心者でもAIを使って熟練者並みの仕事ができることを意味します。

 つまり、AIが発達すると失われる雇用もあれば、新たに生まれる雇用もある。だから、雇用は単純には減りません。パソコンの普及でソフトウェアプログラマーという職種に携わる人が増えたのと同じです。ただ、今はいつ新しい雇用がどのくらい生まれるかが分からないから、不安に感じるのです。

備えあれば憂いなし

 AI革命を生き抜く方法を整理すると、コモディティー化して多くの人が簡単に使えるようになったときを想定しておき、いざ実現したらすぐ動くことが大切です。

 具体的には、製品やサービスの付加価値を高めるためにどう使うかを決めておくこと。例えば、大手建機メーカーのコマツは、無人運転の鉱山用大型トラックを10年前から作っています。これは単に顧客の人件費を減らすためという発想からできたものではありません。むしろ、トラックを合理的に動かして1本1000万円以上するタイヤの磨耗を劇的に軽減し、顧客のコスト削減に貢献。顧客だけでなく、顧客の顧客のコストを下げることも新技術で可能にする付加価値を提供するという発想です。こうした戦略を練ることが重要です。

 加えて、社員をどう動かすかも考えておくこと。IAで初心者がいきなりハイレベルな仕事ができるようになったとき、社内体制をどうするのか。生産性を高めるためにどこにAIを活用するのかを見極めておき、実行に移すことが求められます。

 備えあれば憂いなし。AIをうまく活用すれば、まだまだ日本企業にはできることがあります。

(構成:久保俊介、編集:日経トップリーダー

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