今回のAI革命は旧来のそれとは異なります。単なる一過性のブームでは終わらない。コモディティー化(一般化)し、私たちが今、パソコンで文書やプレゼン資料を作るのと同じくらい簡単に一般の人がAIを使える日が、恐らく予想よりずっと早く訪れます。

 では、そのAIとはそもそも一体何なのか。簡単に言うと、データや画像、音声などのパターン認識のことです。コンピューターの情報処理能力と蓄積能力が向上したことで、飛躍的に進歩しました。ただ、学習して判別できるのは基本的に相関関係だけ。因果関係まではまだ分析できていない。イメージとしてはこんな感じです。医療で使われた場合、検査画像を見て、がんかどうかを即座に見極める正確性は人間以上という実験結果が増えています。しかし、なぜそのがんが発症したのかというメカニズムまでは分からない。

 ですから、AI 革命の根底にあるのは人間の行動を飛躍的にデータとして取り込みやすくなったこと。これを私は「アルゴリズム革命」と呼んでいます。アマゾン創業者のジェフ・ベゾスに言わせると、ソフトウェアプログラマーが明確なルールとアルゴリズムで表現することで、ここ数十年で人間の生活は自動化されてきた。例えば、自動車の運転における人間の状況把握は従来、コンピューターで把握することが難しかった。しかし、最新の機械学習の機能を使うと、画像認識データとして取り込めるようになったのです。こうしたことができるようになると、何が起きるか。もともと人間がやっていたものを完全に自動化し、生産性を飛躍的に向上させることが可能になるのです。自動運転がまさにこれです。

●現在のAIの特徴

 グーグルが開発したAI「アルファ碁」が2016年、囲碁のトップ棋士の1人・李世乭九段(韓国)に3勝1敗で勝ち越したことが話題になりました。しかし、技術革新はこれにとどまりません。グーグルは翌17年に、アルファ碁をさらにグレードアップさせた「アルファ碁ゼロ」を開発。既存のアルファ碁と戦わせたところ、100連勝だった。でも実は囲碁とは別に、このアルファ碁ゼロを作ったグーグルのAI子会社が、AIを使ってグーグルの巨大データセンターにおいて空調最適化を試みた。すると、効率が40%アップし、消費電力が15%減ったそうです。

白物家電ならぬ「シロモノAI」の時代が来る

 このように急速な発展を遂げているAIは、白物家電ならぬ、「シロモノAI」として家庭に定着する日は近い。そのとき、自社として何にAIを使うのかを見極めておく必要があります。

 日本企業は今から技術を革新してフロンティア企業に追いつくというのは率直に言って難しい。むしろ、フロンティア企業が生み出してコモディティー化させたAIをいかに上手に活用するかを考えるべきでしょう。例えば、市場規模が小さすぎてフロンティア企業が見向きもしないニッチな領域で専門データを集めてAIで解析し、製品やサービスの付加価値を探していくといった具合です。

 具体例を挙げましょう。日本の航空会社のサービスレベルは素晴らしいと私は思います。キャビンアテンダントの接客態度は丁寧で、食事もおいしい。しかし、これを海外の他の航空会社と比較して客観的に説得力をもって切符購入時に説明する証拠がない。

 でも今後、AIを使えばそれができるようになる。具体的には、同じ人が日本の航空会社に乗ったときと、他の航空会社に乗ったときの心拍数や血圧などの生体データをそれぞれ取り、ストレスはどちらが少ないかを分析し、日本の航空会社のほうが勝っているという結果を示す。こうすると、自身の健康に非常に関心の高い企業経営者層は、こぞって日本の航空会社を使うようになるかもしません。