ベンチャーキャピタル(VC)の投資額も、最近までややバブル気味と懸念していましたが、やや落ち着いてきたので、弾けて急に冷え込む危険性は減ったと見ています。シリコンバレーを含むカリフォルニアでのVC投資総額は、1980億ドル(2017年、約21兆7800億円、1ドル110円換算)。2位のマイクロソフトやアマゾンの本社があるシアトルがあるワシントン州の60億ドル(同年、約6600億円、同)を大きく引き離しています。

●シリコンバレーで成功する主な流れ
スタートアップ企業を個人投資家やVCがバックアップし、IPOや大企業などからのM&Aにつなげる
 

 ここ数年の傾向では、1990年代後半に起きたドットコム・バブルと異なり、IPO(株式新規公開)が減って、M&A(合併・買収)が増えています。そのM&Aも直近では少し落ち着きました。そうした中、2012~17年、豊富な資金力を武器に、フロンティアが軒並み現金で買っているのが、AI関連のスタートアップ企業なのです。

 よくシリコンバレー自体が、イスラエルやシンガポールなど、ほかの地域にディスラプトされるのかと質問を受けます。私の答えはノー。イスラエルで有望なAI企業が生まれたとしても、それを全世界に普及させようとすると結局、シリコンバレーのフロンティア企業に買ってもらうかたちになる。この力学が続く限り、シリコンバレーの存在意義は続くのです。

ディスラプターの衝撃

 しかも、個人データはネクストオイル(次の石油)と言われていますが、フロンティア企業はケタ違いのデータを既に保有しています。本当の意味でのビッグデータを。位置情報を基に皆さんの行動、車の動きを把握し、最近流行のスマートスピーカーでも、音声認識でデータを集めることができるのです。

 フロンティア企業がこれだけ圧倒的な強さを持っている以上、彼らがどのような戦略で次に何をしようしているのかを見定めておかないと、いつどんな力学に巻き込まれて自社の属する業界がディスラプトされてしまうか分からなくなる。こうした新しい技術・概念を引っさげて、旧来企業を破壊する企業を「ディスラプター」(破壊者)とも、シリコンバレーでは呼んでいます。

 分かりやすい例がスマホ。アップルのiPhoneに象徴されるスマホの登場で、デジタルカメラ、携帯型音楽プレーヤー、カーナビなど、さまざまな製品の需要が急減し、各メーカーはあっという間に苦境に陥りました。最近で言えば、既存の自動車メーカーに対するテスラの存在などがそうでしょう。テスラという企業がどうなろうと、もう世界はテスラの前の状態には戻りません。こうした流れは、AIが普及すると次々に起きる可能性があります。