サイボウズは以前、「世界一使われるグループウエアメーカーになる」という経営理念を掲げていました。それは取り下げたのですか。

青野:いえ、こちらの理念もまだ掲げていますが……。

塚越:それは目標ではないのですか。

青野:今悩んでいます。もし他社を蹴落としてまで世界一になるという意味に解釈されるのであれば、取り下げたほうがいいと思います。

 「うちのソフトがチームワークを良くして人を幸せにするものだと自然に評価され、末広がりに普及する。それで世界一になる」と社員のみんなが感じてくれるのなら、経営理念として掲げる意味があると思っているのですが。

一番より一流を目指せばいい

塚越:一番ではなく、一流になればいいのです。

 一流は何社あってもいい。同じ業界に属していても、極めるものが異なれば並存できるからです。でも、一番は一社しか存在し得ない。だから、結局、誰かを蹴落とさなければならなくなる。そうすると、あつれきが生まれてうまくいかなくなる。

青野:超一流になれということですね。

塚越:トヨタ自動車はもう自動車の生産台数世界一の追求をやめています。一番になるというのは、独フォルクスワーゲンが固執した価値観ではないかと思う。一番になりたくて仕方がないから、排ガス不正にまで手を染めた。

 一番になるより、いかに自社のファンを増やせるかどうかが最近、ますます重要になってきているのではないかと私は感じます。ファンを増やすには、社会貢献活動などをして企業イメージを高めることが重要なのです。

(構成:久保俊介、編集:日経トップリーダー。このコラムは書籍『「いい会社」ってどんな会社ですか?―社員の幸せについて語り合おう―』の一部を再編集して掲載したものです)

塚越 寛(つかこし・ひろし)
伊那食品工業会長。1937年長野県生まれ。高校在学中に肺結核を患い、中退。3年の療養生活を余儀なくされた後、57年に木材会社に就職。翌年、子会社で事実上経営破綻状態だった寒天メーカー、伊那食品工業の立て直しを社長代行として任される。経営再建を果たし、83年に社長、05年に会長に就任した。相場商品だった寒天の安定供給体制を確立。家庭で簡単に寒天菓子作りが楽しめる「かんてんぱぱ」シリーズの開発や、医療、美容市場などの開拓などで48期連続の増収増益を達成するなど、大きな実績を上げる。「社員を幸せにし、社会に貢献すること」が、企業経営の目的という信念を持つ。それを実現する方法として、外部環境に左右されることなく、毎年少しずつ会社が成長する「年輪経営」を提唱している

塚越会長の著書を刊行しました
伊那食品工業の塚越寛会長とサイボウズの青野慶久社長、ユーグレナの出雲充社長が、企業経営や経営者のあり方について議論した書籍『「いい会社」ってどんな会社ですか?―社員の幸せについて語り合おう―』が発売中です。

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