田所:失敗の原因としてよくあるのが、自らのサービスやプロダクトを過大評価してしまうということです。1・5倍ぐらいに評価していると思っていい。事業を立ち上げる人は、自分にはそういったバイアスがかかってることを認識し、バイアスに流されないようにメタ認知力や、冷静に振り返るための内省力がとても大事。

「失敗の定義」とは何か

徳重:自分で会社を経営していると、「失敗の定義」って何だろうと思います。

 そもそも、新しいことはうまくいかない。うまくいくほうがおかしい。ただ、それぐらい難しいことをやるのが、新規事業やイノベーションです。

 売り上げが目標に届かないことで失敗したとしても、その経験で気付きを得たり、自分たちのメンタルが強くなったりする。あるいは、仕事に対する本気度が増したり、思いが強くなったりする。だとすると、それは失敗ではないと思うんです。

 田所さんの研究では、スタートアップが途中で戦略変更する例も多いのですよね。

田所:スタートアップの66%は当初のプランを大幅に変更(ピボット)しています。そこから成功できるのは一部です。

スタートアップが失敗する原因で一番多いのは何ですか。

田所:思い込みをベースに、顧客から何も学ばず、つくりたいものをつくっちゃうことです。

 僕の本の最初に書きましたが、価値あるビジネスのアイデアを見つけるためには、顧客の持っている課題を発見することに加え、「課題の質を上げる」ことが重要です。顧客すら気付いていない痛みがある課題とは何かを徹底的に検証し、深掘りすることです。

 そして、小さい検証と失敗をできるだけたくさん経験し、その検証結果についてチームで学んでいくことが必要です。そうすると、ほかの人が気付いていないことに気付く可能性と回数が高まる。その気付きを軸にして、必要に応じてピボットする。

 駄目なピボットは、「エンジニアがいない」「お金がかかりそう」などの理由を軸にすること。こういった理由による戦略変更は「失敗」と呼んでいいと思います。

(この記事は「日経トップリーダー」9月号の記事を再編集したものです)

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