どうして、あの会社はこんな仕打ちをしたのか。最初からそのつもりだったのか。いや、そんなはずはない。きっと途中で予算が変更になったのだ。上司からコストを下げるように指示されて困った担当者がやったことに違いない。恐らく地元の企業にうちが書いた図面を渡して、安く作るようこっそり頼んだのだろう。では、なぜ担当者はうちに事情を打ち明けてくれなかったのか……。

 ここまで考えて鈴木社長は、このメーカーと取引を始めて2年になるものの、そこまで深い信頼関係が築けていなかったと気がつく。自社から片道2時間半かかるため、顔を合わせる機会が少なかったせいだ。「もっと顧客と密に仕事をしないといけない」。独自の方針の原案はこの時にできた。

非効率は致命傷

新製品の開発方針は「経営計画書」にすべて明記されている。社員全員が常にこれを携帯し、業務の振り返りなどに使っている

 よく考えてみると、スズキ機工のような資金や要員が潤沢とは言えない中小企業の場合、移動に時間がかかる取引先と仕事をすることはデメリットにつながる。

 例えば、同社の業務は、機械を製造し、据え付けたら終わりではなく、不具合がある度に設置先に出向かなければならない。このとき取引先までの移動距離が長ければ長いほど、時間と人件費が重くのしかかる。

 だからこそ明確な基準を設け、顧客を選別する必要がある。図体の小さい企業にとって、非効率は致命傷になりかねないからだ。

 当時のスズキ機工の取引先にも、移動に1時間以上かかる企業が少なくなかった。「真面目に働いても儲からないのは、こういうことだったのか」。鈴木社長は自社の利益率が低い理由を、このとき初めて理解した。

 そう結論付けてからの鈴木社長の行動は早かった。冒頭で紹介した「片道1時間以上かかる顧客の仕事は受けない」という方針を掲げ、即座に実行に移した。

「既存の製品に関しては責任を持ってフォローしますが、新規の仕事は今後受けないことになりました。移動に時間がかかると、きめ細かな対応ができず、かえってご迷惑をかけてしまいますので」。そう説明すると、どこの取引先も納得してくれた。

 こうして移動時間1時間以内の取引先に絞った結果、取引先数は従来の半分まで減った。