安心して働ける環境を整えることと、個人の成績を公開することは、一見相容れない関係のように感じるかもしれない。だが、どちらも社員のためを思ってのこと。社員を甘やかすことが優しさではないのだ。

透明性のある人事評価

 報酬面での公平性も担保する。営業部門と技術部門の社員には成果の対価として、受注額の粗利の3%を賞与で還元している。受注までには、複数の社員が関わるケースも少なくない。その場合、売り上げを計上した社員がそれぞれの貢献度合いにより分配率を決定している。

 「実情を知らない上の人間ではなく、現場の社員が配分を決めるので、不満はない」と技術部の西端幸次氏は話す。

評価、分配方法が公平なので、不満に思ったことはないですね(西端氏)

 人事評価の透明性と納得性も担保する。日本レーザーでは独自の「総合評価表」を用いて、人事評価を実施。日本レーザーの社員としてどうあるべきかが記述されている「クレド」に従って評価項目の内容は決められている。

 全30項目で300点満点。グループ長が社員を評価し、最終的に役員会で決定。その後、評価フィードバックの面接を必ず実施する。「なぜこうした評価になったのか」「どうしたら次回、点数が上がるか」などを話し合うので、努力すれば着実に点数は伸びていく。

 一般的に、多くの企業が相対評価を採用している。その場合50点だった人間が100点になっても全体から見てまだ下位だと、評価は上がらない。ボーナスも昇給も金額に一定の枠があり、その中に収めようと社員を順位付けしているためだ。「ただ、それでは社員のモチベーションは上がらない」。だから日本レーザーでは絶対評価を採用。点数が上がれば報酬も増える仕組みが構築されている。

 さらに日本レーザーは社員全員が株主。会社の業績が上がれば、従業員の持つ株の価値も上がる。ただ、金銭的なメリットより、「自分たちの会社」という「圧倒的な当事者意識が高まったことのほうがずっと大きい」と近藤会長は言う。

いざというとき頑張れる

 働き続けられる環境がある。会社に大事にされているという実感を持てる。その上、好きな仕事ができて、その仕事で会社に貢献できているというやりがいや達成感があれば、いざというときにもうひと頑張りできる。

 誰もが望むであろう働き方を、妥協なしに組織づくりに落とし込んでいるのが、日本レーザーという会社なのだ。優しさと厳しさと公平性により権限委譲に成功した会社は、リーマン・ショックでも赤字を出さなかった。「トップダウン経営では恐らく無理だった」と近藤会長は述懐する(次ページに近藤会長のインタビューがあります)。