企業自身も経営を変え始めた。レトルトのアジフライなどを販売する境港市の水産食品会社、角屋食品は「広がった販路で、もっとアピールできるようにアジフライに合うソースも新たに開発した」(角谷直樹社長)。大市場とのパイプができたことで、様々な変化が誘発されているのだ。

人脈フル活用。企業を束ねて成長市場参入

事例2 大垣共立銀行

 事業開発などの支援をさらに幅広い分野で進めているのが大垣共立銀行だ。2015年9月、大垣市で農場を運営する土里夢ファームの命名権を購入する形で「OKB(大垣共立銀行の略称)農場」として農業に取り組み始めた。

 「農業を体得しないと本当の支援はできない」(安江和仁・情報渉外課長)というのが、その狙い。行内の希望者3人を出向させ、文字通り体感し始めた上に、グループのシンクタンク、OKB総研内に昨年6月、農林研究所を設立。技術面での蓄積を進めている。

 農業だけではない。「産業と徹底して深く関わることで事業を作っていく」。下条崇・渉外課調査役は、東海地区が集積地である航空機産業のエキスパート。長年、この分野をウオッチし、技術を学び、三菱重工業や川崎重工業など世界の航空機部品メーカーと付き合ってきた。

 その知見と人脈を生かし、今取り組んでいるのが、地元の中堅部品メーカーを組み合わせて、三菱重工や川崎重工の製品サプライチェーンに加わることだ。新興国の経済成長で世界の航空機生産は今後20年で倍増するといわれる。その成長産業に中堅企業をつなぎ、伸ばしていこうというわけだ。

1社で無理でも4社なら

 2010年から航空機産業セミナーを毎年開いて、参入を目指す中堅・中小企業を探し、育成を図ってきた。その中から生み出したのが、特定の技術などに強みを持つ企業を組み合わせて一つの中核部品を生産する仕組み作りだ。

 昨年8月には、放電加工に強い日電精密工業、高度な切削加工を行う岩田鉄工所、仕上げ研削の得意な大堀研磨工業、精密板金と穴あけに高い技術を持つツカダを組み合わせて航空機エンジンの中核部品を請け負う態勢を作り出した。

 「組み合わせにより、4社はもう一段高い技術にも挑めるようになった」と吉田竹虎・日電精密工業生産管理部部長は言う。新事業を生んだだけでなく、技術や製品の幅もさらに広がったというわけだ。

 中小企業が地銀内の専門家を見定めて積極的に関わっていけば、成長産業に参入するチャンスが生まれる。受け身だけでは駄目だ。農業や航空機産業への密着ぶりなど、およそ銀行員らしからぬ大垣共立銀のような動きに、中小企業はもっと目を凝らすことが必要だ。

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● 日米経済摩擦・・・繊維は生き残り、半導体は撃沈した
● 日本型経営・・・松下電器元社長は、香港の倉庫で驚嘆した ほか

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