「2025年には6割の地銀が本業の融資などで赤字に陥る」
金融庁が昨年9月、こんなリポートを公表して全国の地銀に衝撃を与えた。人口減の進む地方部では、銀行利益の源泉になる貸し出しの減少が早く、収益の低下が長期的に続くという分析だ。そして金融庁は、これと同時に地銀に新しい評価を加え始めた。
(1)経営が改善した取引先企業数、(2)担保だけでなく、事業内容の評価をして実施した融資件数、(3)創業に関与した件数──など全金融機関共通の5項目と、金融機関の経営方針などに応じて選べる50項目である。
これを17年3月期から地銀などに自己評価してもらい、結果を自主的に開示させた。地銀の融資姿勢を見て、企業は取引相手を選べるようになったのだ。金融庁が狙ったのは、地域金融機関の経営を変え、中小企業経営の強化などにつなげて地域経済の活性化を図ることだった。

地銀の側も促されたから動くだけではない。15~64歳の生産年齢人口は1996年から、総人口は2008年から減少を始めており、課題は既に見えていた。ほぼ同時期から地銀の企業向け融資は減り始めた。「貸し出しの増減は生産年齢人口とほぼ並行して動いてきた」(内野逸勢・大和総研首席研究員)からだ。
働き手の減少は経済成長を下押しし、企業の活動を鈍らせてきた。その長期停滞を変えるには、従来の地銀経営から改革しなければならなくなっていたのである。金融庁のリポートは、地銀に「改革はもはや待ったなし」と宣言したようなものだった。
これは中堅・中小企業にとってむしろチャンスだ。地銀が中小企業の経営改革支援のメニューを増やすのなら、それを“使い倒した”企業ほど強くなれるからだ。
中小企業が変わり始めた
中小企業にとって地銀活用の1つ目は、事業を創り出す力を借りることだろう。冒頭の山陰合同銀もその例だ。松波氏のアイデアで始まった事業は、少しずつ地元中小企業と地域を変えつつある。
特徴のある魚介類や干物などは週に数回は神戸市の店に送る。ワールド・ワンは今年4月には、カニをテーマにした「カニ小屋ワールド」も神戸市に開店。境港を中心に出荷量はさらに増える。松波氏は今年4月にはワールド・ワンに転職し、さらに山陰とのつながりを強め始めた。
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