そのかいあって、2~3年経つと、運転手の質がどんどん高まりました。教育は、経営者がどこまで辛抱できるかに掛かっているんですね。

青木定雄氏
青木定雄氏

 私は朝、出勤したら、必ず一人ひとりの運転手に日報を渡しました。その時、たとえ1分でも必ず話をしたのです。そうすると、週5日で5分、月22日で22分、話をしたことになります。

 それから、月に1回、9カ所あった営業所それぞれの社員を集めて、3時間勉強しました。京都には大学が多いですから、著名な教授を呼んで1時間話してもらいます。その後は、私が先月の反省と今月の方針を話します。私と社員の接点はここにあるんです。何があっても、絶対に休みませんでした。

 しかし、それだけでは足りません。24時間365日、どこかで走っている運転手を集めるのは大変です。そこで今度は、無線マイクを通じて教育することにしました。これは朝晩二回、毎日やりました。元日も欠かしませんでしたよ。

企業の差は教育の差を実感

 私の味方は社員です。銀行でも、得意先でもない。その社員をいかに大切にするか。会社から離れず、常に社員と共にいることが何より重要なんです。

 エムケイでは、多くの研修をします。著名人にお金を払って、講演してもらいます。しかも、一流のホテルや旅館、レストランで、全員に対してやります。一流のサービスを学ばせるためです。

 それには、金が掛かりますよ。エムケイでは、社員一人の教育に年間100万円を掛けています。

 教育は金が掛かるものなんです。しかし、教育に金を掛ければ掛けるほど儲かる。それを私は、実感しました。企業の差は、教育の差であることを。

 ダメな経営者はそれが分かっていません。儲かってからやるのではなく、儲かる前にやるんです。「できない」ではなく、やらなくてはいけない。やる気になれば、どんな困難を乗り越えてでもできます。これはどの業界でも同じです。

 また、教育のためには、経営者自ら勉強しないといけません。経営者に能力がないのに、どうして従業員の能力を開発できますか?

 私は徹底的に交通を勉強しました。数字を勉強しました。京大の研究室にも通い詰めました。勉強するためには時間が必要です。もう、遊ぶ時間など全くありませんでした。

 一方、多くの経営者は、祇園で遊びながら決裁していた。楽して努力をしなかったんですから、エムケイと差が付いたのは当然だったのです。

(この記事は「日経ベンチャー(現・日経トップリーダー)」2005年10月号に掲載した記事を再編集したものです)

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