借入金を原資に給与を2倍に

 2つ目は、2000年代半ばに、社員の給料を2年で2倍にしたこと。これが一番、打撃が大きかったと思います。当時、230人くらいの社員がいて、ざっくり言えば、年収400万円を800万円に引き上げたのです。この給料の原資が、本業で稼いだ利益の中から出していたのなら、何の問題もなかった。

 ところが実際には、銀行からの借入金が原資でした。成長企業であるワイキューブには、当時は銀行がどんどん資金を貸してくれた。金利2%前後で40億円くらい資金調達したと思います。業績が伸び続ければ返済できましたが、それができなくなって破綻しました。前述の通り、本業の利益率が下がったからです。

 そこで、慌てて給料を下げたりコスト削減をしたりして、短期的には半年で4、5億円の利益を出し、返済を始めました。しかし、そこにリーマンショックが起き、資金繰りが極端に悪化しました。

 借入金を原資にして給与を2倍にするなど、あり得ないと思うかもしれません。しかし、当時の私には、それなりの理由があった。採用コンサルティング事業が主力である以上、社員という人的資産と会社のブランディングが生命線です。だから、待遇を良くしたし、ブランディングの一環として、当時一部から批判も受けましたが、本社の地下にバーを設け、社員同士が自由に酒を飲めるようにしたりもしました。

 多くの中小企業の経営者は、社員を採用して実績を上げたら給料を増やすと言います。しかし、その順番では中小企業になかなか人は来ない。だから、順番を逆にしようと。まずリスクを負って給料や福利厚生をよくして入りたい会社にする。そうすれば、いい人材が集まって、その人たちが業績をつくってくれると考えた。ただ、いくら優秀でも、昨日まで学生だった人がいきなり実績を出すというのは、どこかで無理があるとは分かっていました。それでもやってしまったんですね。

地位や名誉に興味はなかった

 実は、自分の中の一番大きな目標は、日本で一番社員の給料が高い会社をつくるということでした。その会社の社長が最も格好いいと思ったんです。家の大きさや金融資産の多さ、企業規模などに全く関心はありませんでした。事実、家は買ったことがありませんから。でも、それは稼いだ利益の中から達成しないといけなかったんですね。

 ブランディングは、当初から割とうまくいっていたと思います。社員数がまだ100人以下のとき、いわゆる「就職人気ランキング」で大手銀行や有名テーマパークより上の16位に入ったこともありました。そうすると、ワイキューブに頼めば、すごい採用ノウハウがあるんじゃないかというイメージが広がって顧客の申し込みが増え、業績が伸びるという好循環が生まれました。

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