会社が潰れた理由に一言で答えるのは難しい。直接の原因は、リーマンショック後に規模の大小を問わず、企業が一斉に新卒採用を抑制し、顧客が激減したことにあります。しかし、冷静に振り返ると、私自身の中では、それ以外の主因が2つあると思っています。

 1つは、中小・ベンチャー企業の新卒採用市場の規模を読み誤ったこと。当時、大手を中心に新卒を定期採用する企業は2~3万社ありました。一方、日本には約400万社の企業がある。そのため、397~398万社は、ワイキューブが開拓する余地のある潜在顧客と考えていました。私たちは累計で5000社くらいの顧客を開拓し、人材採用コンサルティング事業だけで、売上高30億円くらいまでに拡大しましたが、100億円くらいまではいけると思っていました。

ワイキューブ時代は7種類のノートを使い分け、青いインクの万年筆を愛用していた
ワイキューブ時代は7種類のノートを使い分け、青いインクの万年筆を愛用していた

 ところが、そうならなかった。まさにそれが潜在市場の怖さです。何しろ土の中に埋まっている市場を初めて掘り起こすわけですから、どれくらいが適正規模なのかが分からない。売上高30億円を過ぎたあたりから、顧客を1社獲得するコストが段々上がり、利益率が下がり始めたのです。

 最終的には獲得コストが当初の2倍となり、粗利益率は65%から半減し、業績が悪化しました。これは結果論ですが、売上高が30億円に届くか届かないかくらいで維持していれば、しばらくは高い利益率を確保でき、健全な経営ができたと思います。でも、当時はそれが分からないんですよ。

 しかも、1社で20億円を超えてくると、それなりの市場規模。そうすると、競合他社が後追いで参入してくる。体力のある企業の中には「ワイキューブさんと同じサービスを半額で提供しますよ」といった営業を展開するところもありました。私たちのノウハウは分かりやすく、まねしやすかったこともあって、対抗できなくなりました。

「不真面目」なサービスでも人が採れた

 2000年代半ばくらいまでは、表面的に斬新なサービスを展開すれば、中小・ベンチャー企業でも学生が採用できてしまう時代でした。今考えると、「不真面目」なサービスを結構、展開していました。見た目が大切なので、就職説明会に出るために社長にスーツを新調してもらったり、髪型を変えてもらって、格好良く見せたり。社長と社員の会話をわざとフランクにするように演出して、風通しのいい会社というイメージを与えたりもしましたね。

 「企業の事業内容や社内の人材教育制度などの魅力で採用するのが本来の姿だ。ワイキューブのノウハウは採用の本質を捉えていない」と当時、批判を受けたりもしました。それでも、結構いい子が採れてしまった。しかし、リーマンショック以降は、採用方法が百社百様となり、単一の勝ちパターンが通用する時代ではなくなりました。むしろ、本来の姿での勝負になりましたが、当時はちょうどその変わり目だったと思います。

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