多くの中小企業の社長が頭を抱えている問題が人手不足。大事な戦力であるにもかかわらず、パートの本音を知らない社長は多い。しかし、社長の考え方次第で、パートのモチベーションはぐっと高まる。パート100人に聞いた「やる気になる言葉」を紹介しながら、パートが働きやすい職場について具体的に考える。

正社員だけでは人手が足りず、パート社員(以下パート)をフル活用しなければ、仕事は回らない。そんな企業も多いだろう。
しかし、どうすればパートがやる気になるのかを理解しておらず、間違った接し方でパートの神経を逆なでする社長もいる。パートのモチベーションは時給額で決まり、時給さえ適当に上げておけばパートは働いてくれると誤解していないか。
「日経トップリーダー」では、あるパートに取材した。その話を聞くと、いかに会社の理解が足りないかが分かり、ちょっとした声のかけ方でやる気が高まることに気付く。では、パートの話に耳を傾けてみよう。
私たちと一緒に仕事をする社長の息子(専務)はひどい。同じ職場なのに、私たちパートへの挨拶がありません。朝礼で現場への注意をするとき、専務はガムを噛みながら話すことさえある。その態度だけで話を聞く気が無くなります。上から目線で頭ごなしに言われても全くやる気になりません。
しかも、ネチネチといつも同じことばかり繰り返す。「おばさんだから何を言ってもいい」と思っているのかもしれないですが、私だって傷つきます。こちらも自分なりに考えて動こうとしているのに、事細かに指示してきたり、無闇に急かされたりすると、子供ではないが「今やろうと思っていたのに」と思います。
あるとき、専務がいつの間にか背後にいてストップウオッチで作業時間を計っていたこともあります。パートを作業する機械のように思っているのではないでしょうか。私たちにだって感情があるんです……。
前のパート先をやめたのはベテランのパートリーダーが怖かったから。今の職場にも同じような人がいて困ります。いつもイライラしていて、新人さんなどを集中攻撃して怒るのです。他はいい人たちばかりですが、この人のために職場の雰囲気は悪いですね。
その一方で、社長は優しいです。事務所に入ってくるときは「お疲れ様です。いつもありがとうございます」ときちんと挨拶してくれる。それだけで気分が良くなります。ちょっとしたお菓子をたまに持ってきてくれるのも、私たちにも気を遣ってくれていると分かってうれしい。
仕事中は「すごいね」「よくこれだけの数できるね」と言われると、自分が評価されていることが分かって、やる気が湧きます。
話に出てきた会社の専務のような態度になってしまうのは、パートをただの駒としてしか見ていないからだろう。これではパートの能力を引き出すことはおぼつかない。次のページで紹介する全国のパート100人の言葉にあるように、パートの気持ちを考えて声をかけることが、やる気を高めるためには効果的だと分かる。
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