芽が出るまで、ずっと教育

導入教育には、どれくらいの期間をかけましたか。

白井:何々を教えたから教育は終わりというものではありません。毎日、「今日のプレーは、チームの勝利に貢献できていただろうか」と選手に問いかけます。

 私は試合前、「絶対に勝つぞ」と選手たちに言います。勝ちを狙うのは当然と思うかもしれませんが、「2軍は育成の場だから、試合の勝ち負けはどうでもいい」という監督、選手が結構多いのです。試合で勝ち負けを度外視したら意味がない。

 必ず勝つ。気持ちを張り詰めた中で、いろいろな状況判断を重ねる。それが、チームを勝利させるための技術やメンタルの向上、戦術理解につながるのです。

 ただし、試合後は勝敗のことを一切問いません。勝つためにやるべきことができたかどうか。そこにフォーカスする。チームプレーができていなければ、勝ったとしても評価しません。チームプレーができていれば、負けても次につながるのです。

 私は勝利至上主義ではありません。勝利は求めますが、あくまでプロセス至上主義です。負けたことについては「悔しいよな」と選手と気持ちを共有しますが、「なぜ負けたんだ」と選手を追及しない。結果の責任は指導者にあるからです。チームが勝つために、やるべきことができたかどうか。そのプロセスだけ厳しく指導します。

そうした指導方法に反発する選手もいるのでは。

白井:2軍はルーキーばかりではありません。何年も2軍生活を送っている選手もいます。その中には、やる気のない人、自分中心の考えから抜け出せない人もいる。プロの世界は、やる気に満ちた選手ばかりだと思われがちですが、現実には意欲に欠ける選手のほうが圧倒的に多い。

 1チームの所属選手は70人。そのうち1軍に定着しているのは20人もいません。皆さんが知っている有名選手は、全体から見ればほんのひと握りです。そのため「1軍でレギュラーを取る力は自分にない。2軍生活を何とか続けて給料がもらえればいい」と向上心を失う選手が出てくる。

 そうした選手を「もう何を言っても無駄だ」と見放す監督、コーチもいます。でも、私は教えることは絶対にやめません。いつ芽が出るか、分からないからです。

 今日、ある選手に100パーセントのエネルギーを注いで教えたが、フォア・ザ・チームの精神を理解してもらえなかった。それなら私は、明日は今日以上の熱意を込めて伝えます。相手の心に響くように別の方法も試してみます。指導者が伝えることを諦めたら、その時点で、選手の芽が出る可能性はなくなるのです。

 芽が出る時期は、本人にも指導者にも分かりません。分からないからこそ、しっかり種をまいて手塩にかけて育て続けるのです。