玉塚:柳井さんもよく言っていましたが、いくら店や事務所があっても、会社は砂上の楼閣のようなもの。お客様や市場の期待に応え続けられなければ、あっという間になくなります。

 しかも国内は今、高齢化、デジタル化などが同時並行で進んでいます。ものすごく速い変化の中で、全社一丸となってニーズを捉えて対応し続けなければならない。

 いい会社では、経営陣と現場の距離が近く、トップダウンとボトムアップがぶつかり合います。業界をまたいだ大きなマクロトレンドをトップが俯瞰して捉えつつ、顧客との対話で出たつぶやきといったミクロな事象を現場が上げる。

 そして議論しながら小さな仮説を次々に立ててとにかく実行し、お客様の声を聞いて修正してというPDCAサイクルを回し続ける。この仮説・検証をし続ける企業が変化に対応できると思うんです。中途半端なところは、割とどうでもいい。

 こうしたカルチャーをつくり上げるためにトップはマクロとミクロの両方を行ったり来たりしながら、スピード感を持って決断していかなければならない。専門領域の技術やノウハウ以外に、一歩引いてみる客観的な視点も必要です。

 実は僕なりに専門領域も勉強していて、ハーツに来るとき、極秘で2カ月くらいプログラミング教室に通いましたよ。出来上がった画面が動かないから、先生に「なぜですか」と聞いたら「カッコが1つ抜けてます」とか「コロンが逆です」と言われる。「えー、そんなの何とかしてよ~」という感じで、僕は付いていけない(笑)。

大組織はスピードが出にくい

(現サントリーホールディングス社長の)新浪(剛史)さんの後に社長を務めたローソンでは、それは実現できましたか。

玉塚:大変でしたね。ローソン本体の組織が大きいことに加えて、コンビニエンスストアの各加盟店オーナーもいる。

 社員の自主性を育むためにはトップが我慢することも重要ですが、組織を率いるときにはやはり経営者の役割は大きく、つまり、リーダーシップが必要だと思います。

 経営のスピード感は組織が拡大すると悪くなる。縦割りになったりして、ぶち壊すのにエネルギーが要ります。そこで問われるのが経営者の力なんです。

(この記事は「日経トップリーダー」2018年4月号に掲載した記事を再構成したものです)

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