深刻な経営危機に陥り、クラブの存続すら危ぶまれていたものの、改革を始めた7カ月後には初のJ1昇格を決めたV・ファーレン長崎。監督も主力選手の顔ぶれも変わっていないにもかかわらず、なぜこれほど短期間で強いチームへと変貌できたのか。快進撃の理由を探った。

「V・ファーレン長崎のJ1昇格が決まったとき、『さすがジャパネットさん(運を)持っていますね』と言ってくださる方が多かった。確かに(昇格は)予想より早かったものの、丁寧にさまざまなことに取り組んできたので当然の結果だと思っている」
サッカークラブチーム、V・ファーレン長崎の親会社であるジャパネットホールディングスの社長 兼 CEO(最高経営責任者)で、V・ファーレン長崎の社外取締役も務める髙田旭人(あきと)氏はこう強調する。
ジャパネットが火中の栗を拾ったのは、2017年3月のこと。当時、V・ファーレン長崎はJ2で22チーム中15位と成績は低迷。経営的にも17年1月期の決算で1億3770万円の最終赤字を計上した。累積赤字は3億2460万円まで膨らみ、一時は選手の給料未払いが懸念されるほど経営が悪化していた。
それからわずか7カ月。奇跡が起きたようにも見えるが、その背景にあったのは、旭人氏主導で実施した地道な取り組みだった。
旭人氏は「ジャパネットを育ててもらった地元への恩返しのため」、チームの支援を決めた。旭人氏の父でジャパネットの創業者である明氏に新生V・ファーレン長崎の社長就任を要請。5月には全株式を取得して子会社化した。

株式の100%取得にこだわったのは「選手たちに株主の顔色をうかがわず、試合に勝つことに集中してほしい」という思いからだ。また複数の株主がいると、誰が責任を持つのか、誰が権限を持つのかがはっきりしない。「100%ならジャパネットが100%権限も責任も負える」と考えた。
もともとスポーツマネジメントに興味があり、10年ぐらい前からこの分野の勉強を続けていたという旭人氏。ただ、V・ファーレン長崎の社長は初めから明氏に担ってもらう考えだった。「長崎を1つにまとめられる人は父しかいない。サポーターからの支持も厚く、父が試合会場に行くとアイドル並みの歓声が上がるほど」。
V・ファーレン長崎のスタッフは約30人。既存の社員が半分、もう半分は新規採用者とジャパネットからの出向・転籍者だ。
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