13年4月、19歳のときに単身で沖縄へ移り住み、大検(=高等学校卒業程度認定試験)に合格した後、琉球大学へ入学。在学中に中国の商品を輸入して日本国内に流通させる事業を立ち上げた。「ビジネスの世界に入ったら、ものすごく楽しかった。この世界でやっていくんだろうなと思いました」と古田社長は当時を振り返る。
その事業が当たって黒字化し、貿易会社と業務連携の契約を結び、貿易の仕事にも携わった。そこで、商品を売るためには、パッケージや味以上に、その商品の「ストーリー」が大事だと気づく。それを伝える手段として、バーコードに目を付け「Payke」のサービスが生まれた。
落ち込んだ時期があったから、怖いものがなくなった
山やバイクの他に、モラトリアム期間の古田社長が多くの時間を費やしていたのが読書だったという。
「子どもの時から、親から遊ぶお金はそんなにもらえなかったのですが、本を買うお金だけはたくさん与えてもらいました。本だけは自由に買っていいと言われていて、書店の棚の端から端まで、という勢いで大量買いをするほど。高校に行かなくなってからも、ずっと本は読んでいて、オーストリアの精神科医・ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』やドイツの社会心理学者・エーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』などを当時よく読んでいました」(古田社長)
『夜と霧』に感銘を受け、自身の生き方のテーマとなっている言葉があるという。 「『苦悩を味わい尽くせ』というような一節があるんです。起業してからも、うまくいかないことはたくさんありますが、そんな時はこの言葉が支えになっています」と話す。
今は、8人のスタッフとともに「Payke」の拡販にドライブをかけている。沖縄と東京に拠点を置き、両方を行ったり来たりする日々だ。

没頭できるビジネスと出合い、約10年間のモラトリアム期間からようやく脱出できた。
「あの期間があったからこそ、怖いものがなくなりました。今は、もし何かダメなことがあっても、ダメなりの理由があると超越した感覚を持てます。
何より、日々予定があるって素晴らしいですね(笑)。
今は毎日の生活にものすごく張り合いがあります。このビジネスを成功させることだけを考えて、突き進んでいきます」
こう古田社長は胸を張る。しっかりと悩み苦しんだ末に自らの進む道を見つけた若い経営者のこれからに期待したい。
(後編では、Paykeのサービスについて古田社長に解説してもらいます。構成:尾越まり恵)

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