一つは、社員や取引先に大きな希望を持ってもらうこと。まさかと思えるような大きな夢を次第に実現していくことで、社員の士気は上がり、積極精神と会社への求心力が高まる。士気の高さや積極精神が、企業の大きな力になることは今まで触れた通りだ。
二つ目は、高い目標がなければ大きな結果は得られないという永守社長らしい考え方である。
「登山家を目指す人は子供の頃から、いずれはアルプスに登りたいと考えるもの。大きな目標を持つから、その時に備えて、今何をすべきかを考えるようになる」
現実化する4つの資質
ただ、大ボラをやがて夢に変え、最後は現実に引き寄せていくには、無手勝流では話にならない。
将来に向けた徹底した「計画性」、その計画を実現していく「緻密さ」は必須。さらに、あらゆる物事から必要なものを吸収しようとする「学び」の意識、そして、何より大きな「野望」がなくてはならない。これら4つの資質に裏打ちされた経営者の綿密な行動が、大ボラを現実化する力になる。
もちろん、社員に対してホラをどう伝え、説得するかという点も重要だ。永守社長の話し方はどの社員にも一様というわけではない。同じテーマで話すときも、社員の立場によって、その中身を微妙に変えているという。
話の中身をイメージしやすいように「危機意識」と「夢」に分けてみると、比率はこうなる。
- 役員や上級幹部が相手の場合は、「危機意識」90%、「夢」10%
- 部課長クラスの管理職に対しては、「危機意識」70%、「夢」30%
- 主任クラスに話す場合は、「危機意識」50%、「夢」50%
- 一般社員に対する場合は、「危機意識」30%、「夢」70%
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