当時の訓練は苛烈だった。入隊するなり、それまで20回程度しかできなかった腕立て伏せを「1000回せよ」と命じられた。途中でお腹をついても、新人のうち1人が駄目でも、全員でやり直し。

 軍歌も30曲くらい覚えさせられた。就寝時間の前に、先輩が1回だけ歌う。それを耳で覚える。歌詞を間違えると走らされる。1回ではまず歌えないから、最低でも5、6回はグラウンドを回らねばならない。消灯しても訓練の一環で1時間おきに起きて集合し、走ることを繰り返した。

自衛官時代の木村。当時の体重は現在の半分くらい

 そんな厳しい訓練の日々は3カ月続き、待望の夏休みでやっと里帰りが許される。「実家から宿舎に戻るとき、このまま逃げてしまおうかと悩んだ。仲間もみんなそう。でも家族の応援があったから歯を食いしばった。今となったらいい経験だけど、同じことはもうできないと思う」。木村はこの頃のつらさを思い出したのか、涙ぐんだ。

 ともあれ十代の自衛隊での経験が、木村にとって現在の経営までつながる原点となったのは確かだ。「人間は極限状態になると、すごい力が湧いてくることが分かった」。

即断即決、一気呵成

 他にも、自衛隊で学んだことは数多い。「自衛官は要領を本分とすべし」。何をするにも的を射よという意味だ。今でも、木村は電話で用件を話すのに30秒以上かかることはない。用件のみ、「5W1H」しか話さないからだ。当然、経営判断も早い。

「今の時代の経営は、即断即決で動かないと話にならない。最悪なのは、うだうだ同じことを考え続けること。私は5分くらい考えて、いい考えが思い浮かばなかったら明日にするか、人に意見を聞く。戦場なら、1時間も2時間もああだこうだと考えて実行しないでいたら、撃ち込まれて終わりだよ」(後編に続く)

(この記事は日経BP社『日経トップリーダー』2016年7月号を再編集しました。構成:荻島央江、編集:日経トップリーダー

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