偶然にも取材当日に開催された取締役会で、桜井は社長を退任し会長になった。新社長には、副社長を務めてきた息子、一宏が就任。「65歳を超えて体力的にもきつくなってきたし、この年齢で重要な経営判断を下すのには危惧もある。そろそろ社長交代のタイミングかなと思っていた」(桜井)のが理由だという。

自分が元気なうちに社長は息子に任せる

「事業承継は早いほうがいい」と考える桜井は、息子に社長を譲った
「事業承継は早いほうがいい」と考える桜井は、息子に社長を譲った

 バトンタッチに、決して不安がないわけではない。「私も亡父も、それぞれ先代の社長とは決して仲が良くなかった。息子の場合は順調に来ているから、経営者に不可欠な“野生の勘”が身についているかどうか。だから、私が元気なうちに交代するのがいいと考えた」と桜井は話す。

 旭酒造の成長に大きな役割を果たしてきた桜井の勘。それは新社長の時代になっても発揮されるだろう。桜井自身、「ほかに趣味もないし、死ぬまで会社の経営に関わる」と言ってはばからない。

 事業拡大と日本文化の普及の両面から、旭酒造はさらなる海外展開を求められている。4代目とうまく役割分担ができれば、桜井はますますそちらに心血を注ぐだろう。

(おわり。文:井上俊明、この記事は「日経トップリーダー」2016年11月号の内容を基に再編集しました)

旭酒造の桜井博志会長をはじめ、経営者が月1回、計12人登壇する通年セミナー「日経トップリーダー大学」第5期が4月から始まります。経営力を高めたいと真剣に考える中小企業経営者のための年間プログラムです。本講座の詳細はこちらをご覧ください。

この記事はシリーズ「ベンチャー最前線」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。