それが、フリースケジュール導入後はパートが辞めなくなった。作業効率が上がり、品質もアップ(下写真)。パート全体の勤務時間は減ったものの時間当たりの売上高が上がったため、人件費を約400万円削減できた。

以前は表面がぼこぼこ(左)。今は衣が丁寧に付けられ、食感や旨みを最大限に引き出す仕上がりに(右)

 工場長の武蔵北斗氏は「悪い影響は現時点で何一つない。パートを甘やかしているわけではなく、効率と品質の向上にこの働き方が必要不可欠だと確信したから今も続けている」と説明する。

 世間の人手不足もどこ吹く風。ホームページで募集をかけるとすぐに人が集まる。この4年で採用にかかったコストはゼロ。「仕事以外の生活を大切にしながら、都合に合わせて仕事をする。そんな働き方を提案できれば、介護や子育て中の人を確保できる会社になれると思う」。

ギスギスした職場

 パプアニューギニア海産がこうした大胆な取り組みを採用するに至ったのには事情があった。

 武藤氏の父で、現在社長を務める優(まさる)氏が同社を設立したのは1991年。順調に事業を伸ばしていたものの、2011年の東日本大震災で宮城県石巻市にあった工場が被害に遭い、操業停止。同年、大阪に会社を移した。

 見知らぬ土地に来て苦労したのが、パート集めだ。何とか頭数をそろえようやく軌道に乗ったと思った頃、石巻時代からの唯一の社員で、工場長を任せていた人物が会社を辞めてしまった。

 代わって武藤氏が工場長として現場に入ると、職場の雰囲気の悪さに驚いた。それまで武藤氏は営業回りに必死で、そうした現場の状況に全く気づいていなかった。パート同士がいくつかのグループに分かれ、いがみ合っている。

「職場環境が変わると品質が上がることが、(上の)2枚の写真を見比べるだけで一目瞭然でしょう」と武藤工場長は話す(写真/宮田昌彦、以下同)

 震災に遭いながら生き残ったのに、誰も幸せでないこんな会社を続けていくのか。一体どうすればみんなが働きやすい職場にできるのか。試行錯誤の末にたどり着いたのが、「いつでも気兼ねなく休める会社にすること」だった。

 「パートには子育て中のお母さんが目立ち、やむを得ない事情で会社を休むことも多かった。急に休みを取るとき、いちいち会社に事情を説明することが彼女たちの大きなストレスになっているのではないかと考えた」(武藤氏)。

段階的に働き方を変更

 「フリースケジュールにしたら、誰も来なかったり、極端に人が少ない日が発生したりしてしまうのではないか」とは思わなかった。パートは収入を得るために働きに来ている。働かなければその分お金も入ってこないから、いくら好きな日に来ていいと言っても、日々、一定以上のパートは出勤するはずだと読んだ。