大阪から電車で1時間の田園地帯、兵庫県三田市にある洋菓子店「パティシエ エス コヤマ」。1日約4000人が押し寄せる人気店だ。世界的パティシエ(菓子職人)でもある小山進社長は人づくりに徹底的に取り組むことで、商品力と接客力を高めてきた。そのノウハウを紹介する後編の今回は、一人のスタッフが犯した失敗を全員で共有して学びに変える仕組みなどについて解説する(前回の記事はこちら)。

 日報に赤字を入れて社員に返す以外にも、人材育成のために小山社長が毎日続けていることが、もう1つある。終礼での“失敗報告会”だ。

失敗はすべて隠さず表に出す

 閉店後、店の厨房に約30人の製造部門の社員が集まり、1日を締めくくる終礼が始まる。「クッキーを焼く際に、生地の状態を1枚ずつ確かめずにオーブンに入れたため、焼き上がりがバラついてしまいました」「先輩に報告や相談をせずに、自己判断で作業を進めてしまった結果、周囲に迷惑をかけてしまいました」。

 この日は10人余りが、1日の仕事を振り返り、自分が犯したミスを事細かに発表した。発表するのは失敗の内容だけではない。失敗の原因はどこにあるのか、どうすれば失敗を防げるか、それぞれの社員が自分なりに考えをまとめて言葉にする。失敗を全員で共有し、学びに変える。

閉店後の終礼で、1日の仕事を振り返り、自分が犯した失敗を発表する。共有することで学びに変える(写真:直江 竜也)

 「失敗しても、それを皆の前で話してくれたら、それはもう失敗ではない」。小山社長は社員に向けてそう繰り返し伝えてきた。失敗を恐れて縮こまったり、ミスを隠そうとしたりする社員が増えれば、会社の活力は失われる。「失敗は最高の教材」であることを、失敗を恐れがちな若い世代に、身をもって学ばせようとしている。