店を訪れて感じるのは、店頭に立つ接客係の社員はもちろん、裏方である製造担当の社員も生き生きと顧客と接していることだ。

 積極的に来店客に笑顔で挨拶し、質問や要望を受ければてきぱきと応える。エス コヤマでは職人でも新人は必ず店頭で接客を担当する。「お客様を見ながら仕事をする姿勢を養うため」(小山社長)だ。

 製造の現場を顧客と最も近い場所に設けるのがこの会社のポリシーだ。厨房を文字通り“ガラス張り”にしてあり、店の外から作業の一部始終が見えるようになっている。

 来店客の中には、スタッフが真剣な面持ちで作業する様子を、足を止めて見入る姿も多い。商品を安心して買ってもらうためでもあるものの、そうした顧客との近さが、「商品づくりの面でも細やかな心配りを育む」(小山社長)。

 来店客が感動するのは、商品だけではない。ゆったりくつろげるように、建物の周囲には季節を感じさせる草木を植え、木陰にはベンチを用意。さらに遊び心に満ちたオブジェや子供が遊べる築山などが、ところ狭しと配置されている。

 こうした快適な空間も、ゴミや雑草があればさっと手を動かす一人ひとりの社員によって維持されている。記者が取材に訪れた日、東京から来たあるお客は、「ディズニーランドみたいに居心地がいいね」と感想を漏らした。

社長と社員を結ぶ毎日1回の往復書簡

プロフィール こやま・すすむ 1964年、京都生まれ。83年に「スイス菓子ハイジ」に入社。本店シェフパティシエ、商品開発部長などを歴任。2000年に独立し、パティシエ エス コヤマを設立。コンサルティング業務を経て、03年に兵庫県三田市に洋菓子店を出した。

 真摯に仕事と向き合い、顧客や仲間への心配りができる社員を育むために、小山社長が毎日続けてきたことがある。

 それは、約70人の社員全員の日報のチェックだ。日報はA4のコピー用紙に罫線を引いたシンプルなもので、細かな項目は設けていない。社員は1日を振り返り、自分はその日に何を考えながらどう行動したのか、自分の目指す目標に対してまだ何が足りないのか、などの仕事に対する思いを自由に書き綴る。狙いは、「自分と向き合い、課題を見つけてもらうこと」(小山社長)にある。